●Mitten●



クリスマス前。

不意に飛び込んできた仕事の合間合間に編んだために、何とも不恰好になってしまった手袋は。
当節になってもまだ、日付が変わるまで飲み歩いてる、どこぞのバカな男へのクリスマスプレゼントだったりする。
とはいえ、クリスマス直前の22日になってようやく片付いた以来のあと、
残りの仕上げ部分を大急ぎでやったもんだから……。
その姿たるや、我ながら目を覆いたくなるような散々な出来だった。



そして今日、買い物がてらに簡単なラッピング用品を探してみたのだけど……
これがみな、なんとも可愛らしいクリスマスカラーばかりで。
こんなのに私の不恰好なこの手袋を包むなんて……それこそ、犯罪行為じゃないのよぉ……
……と、そう思って、泣く泣く諦めて。
激しい虚脱感と絶望感に打ちのめされて、近所の公園のベンチに座り込んでしまった。



バッグから取り出したそれは、やはりどう贔屓目に見ても不恰好なシロモノで。
手にはめてみれば、当たり前だけど、リョウのサイズに作ったからブカブカで。
ところどころ不揃いな編み目からは隙間風が入り込んで、手ばかりか、心までも冷えていく。
クリスマスのイブイブだってのに……まったく、情けないったらありゃしない。



「はぁぁ……………」
と、いつに無く重苦しいためいきをついたところへ、不意に後ろから声を掛けられて。
ベンチから飛び上がるほどに驚いた。
「……おまぁ、何やってんの?」
「うっわ…………っと、リョウ!!」



「……んぁ?その手袋、どうしたんだ?」
「あっと……そう、ココに落ちてたのよ。誰かの忘れ物みたいね」
「ふーん………」
「まったくねー……この寒いのに、こんなの落として行っちゃって、変な人よね。
あぁ、きっと不恰好だから、捨ててったのかな?きっと」
「ふーん………」



そう言って私の手から手袋をひったくり、前に後ろに右左……と検分中。
「……まぁ、確かに不恰好ではあるな」
「……………」
わかりきっていたこととはいえ、こうもハッキリ最終通告されるのは、正直キツイ。
「ははは……だよねぇ~?どうしようもなく不恰好な手袋!!」
それでも懸命に、ひきつった笑みを浮かべて。
どうにかやっと、返事を返した。



「さぁリョウ、帰ろう?こんなとこに長居したら、風邪ひいちゃうよ」
「んー…・…これ、俺が貰うわ」
「……………へっ?!」
驚く間に、するりとその手袋をはめて。
そして試すがえす眺めて……ニヤリと笑う。



「だっ……だめよ。だってそれは、ココに落ちて……」
「どこの誰が落としてったか、わかんないんだろう?」
「でっ、でも。落とした人が取りに来るかもしれないし」
「捨てたくなるくらい、不恰好なんだろう?」
「そっ、そりゃぁ確かにそうだけど。でっ、でも……」
「そんな取りに来るかどうかもわかんねーんじゃ、ココに置いとくだけ無駄だろう?
そいつもきっと、もうどこかで新しいのを買ってるさ。
いや……案外彼女から、手編みのイイのを貰ってたり……な」
「…………………」
「ほ~んと、不恰好だな。でも……あったかさにゃ、変わりは無いんだしぃ?
うん……よし。リョウちゃん、もぉ~らいっと♪」



慌ててバタバタと文句を言うものの、
その手袋はすっぽりとリョウの手を包み込んでいて。
その感触を確かめるように、握ったり閉じたりとする己が手を、リョウが愛おしそうに眺める。
そして寒そうに己が頬を包み込むようにしたりするもんだから……
どうしよう………すっごく嬉しいかもっっっ////



そんな姿を見ちゃったら、何だかんだと、嘘の文句を言えるわけも無くて。
本来は、そうやって喜んでくれる顔が見たかったのだから、何だか無性に嬉しくて。
それにつられてかはわからないけど……知らず、こちらも微笑んでしまった。



「……しょっ、しょうがないわね。落とし主には悪いけど、
きっと新しく素敵な手袋を手に入れてると思って、貰っておけば?
それにしてもアンタって、いつからそんなにモノに執着するようになったワケ……?」
「んぁ~……?そうでもないぜ?俺、もっこりちゃん以外には、執着心ゼロだしぃ~?
まぁコレは……意外にも俺好みの色だったし。何だか不恰好にも、俺のサイズにあってるし……ってトコかな?」
「…………っっっ//////」



ニヤリと笑うリョウの目が、何だかすべてお見通しと語っているようで。
急に胸がドギマギと早鐘を打つ。
それにつられて赤くなる頬を知られないようにと、慌ててベンチから腰を上げた。
「まっ、まぁ、そんなコト、どうでもいいわ?ホラ……いつまでもこんな寒空の下にいたら、風邪ひくわ。帰るわよ?!」
……と、足元に置いていた買い物袋を抱え上げて、リョウの返事も待たずにアパートへと足を進める。
「……ったく……おい、待てよ、香ぃ~」



そんな言葉が、ゆっくりとこちらに近づくのを確認しながら、
寒空の下、どうにもこうにも抑えきれない笑みを必死に堪えて。
後ろから追い駆けて来るリョウに、そうと知られぬようにと、少しだけ肩を揺らした。




END    2006.12.23