●strawberry on a shortcake●



「……んじゃぁ、ま……おめっとさん」

「ふふ……ありがとう、リョウ」
のどかな春の昼下がり、アパートのリビングに二人。
熱いコーヒーの入ったマグをカチリと合わせ、ささやかな乾杯をした。



リョウの誕生日を祝った後、ふいに舞い込んで来た久々の依頼。
ストーカーからのボディーガードという、リョウの大嫌いな手のものだったのだけど、
意外にもリョウが素直に請けてくれたので、ホッとした。



そしてどうにか片付いたのは、今日、3月31日。
美樹さんたちが真ん中バースデーのパーティーを企画してくれてたけど、
残念ながら、間に合わなくて。
でも、依頼を終えた今日、その日……というのもナンなので、
後日、改めて……というコトになった。



テーブルの上には、可愛い小さめのバースデーケーキ。
「でも、せっかくの香さんのお誕生日だから……」
と、美樹さんが手ずから届けてくれた、海坊主さんお手製のそれは、
真っ赤なイチゴが惜しげもなく、たっぷりとあしらわれてて。
季節を先取りしたような、甘酸っぱい春の香りにあふれていた。



ソファの上、ごろんと転がった私に、リョウがやわらかな笑みをくれる。
ケンカばかりの二人だったのに、いつの間にか、こんな穏やかな笑みをくれるようになった。
絶対に……永遠に来ないであろうと思った時間(とき)を得て。
言葉に出来ない、どうしようもないほどの幸福感に包まれる。



「…………ほれ」
「………ん…/////」
切り分けたケーキに、フォークを刺して。
リョウが私の口へと運んでくれる。
ちょっぴり恥ずかしそうに笑ってはいるけれど、特別、嫌そうには見えなくて。
らしくもないコトだけど、これも私の誕生日の特典てヤツなのかしら。
だとしたら……どうしよう、すっごく嬉しい。



「……ん、おいしv」
「……そうか?……ほれ、次」
あーんと口を開ける私にくすくすと笑いながら、リョウがケーキを運んでくれる。
少し仕事の疲れが残る身体に、生クリームの甘さが心地よかった。
……と、続いて、ケーキの上。
生クリームと共に飾られた、真っ赤な大粒のイチゴをくれようとするリョウを見止めて、慌ててストップを掛ける。



「……ちょっ……ストップ、リョウ!!イチゴは一番最後なのっ!!」
「……んだよ。まだこんなにあるんだぜ……?」
確かにテーブルの上、ホールケーキの残りには、たくさんのイチゴが並んでる。
でも、今食べているケーキには、そのイチゴひとつきりで……。
ケーキのイチゴは一番最後っ!!というのが、常の私。
だって大好きなものほど、最後まで大事に取っておきたいんだもの……。
はらりと舞うカーテンからこぼれる春の日に照らされて、真っ赤なイチゴが、より一層その輝きを増す。
う゛ー……こんな綺麗なイチゴ、やっぱり先には食べられないよ……。



「……いーのっ!!イチゴは最後。大事なのは、一番最後に食べるのっ!!」
「好きなモンを一番最後に食うなんざ、お前もまだまだガキだよな」
ふーんだっ!!私の勝手だもん。どうせ私はガキですよーだっ!!
ぷぅと頬をふくらます私にくすくすと笑いながら、クリームのたっぷりついたスポンジをよこしてくれる。
そんなリョウにいーっ!!と返しながら、クリームのお化粧をしたスポンジを口いっぱいに頬張った。



そんなやり取りが何度か続いて、お皿の上には、ようやく最後のイチゴがひとつきり。
ぷしゅりとフォークで刺した瞬間、赤い汁が飛び散って。
陽にキラキラと輝くのに、瞬時、見惚れる。
「……ほれ、お待ち兼ねのイチゴ」
「んー……ありがと」
一際大きな口を開けて、大粒のイチゴを出迎える。
口の中に入ったそれは、甘くてすっぱい、春の味がした。



「……もぐ………そういえば、リョウはケーキ、食べないの……?」
「……んー甘いモンは苦手だしなー……」
「……そう………」
わかっちゃいるけど、でも、せっかくの海坊主さんのケーキ。
一口くらい、食べてあげてもいいのにね……・。
そんなコトを思いながら、口の中いっぱいに広がるイチゴを味わう。
「……でも、まぁ……これくらいはいただいておくか……」
……と、ふいに目の前に影が差して、ほのかなぬくもりが近づいて。
そして……天井が消えた。



「……う゛ぇ……やっぱ、あめぇー」
瞬時、眉間に皺をよせ、私の口から横取りしたイチゴをもぐもぐと咀嚼する。
その顔はいたって平然として……って、ちょっと、今のっっっ?!
「……ちょっ………今の、なっっっ?!//////」
「んぁ~?だって“好きなモンは一番最後に食う”……だろ?それに……」
「………それ、に………?」
「イチゴの花言葉は誘惑とか、甘い香り……って、香ちゃん、知ってた?」
ニヤリと笑うその目元も口元も、常日頃の意地悪モード体制、準備万端で。
じりじりと近寄ってくるリョウに、思わず後ずさり。



「………そっ……そんなの、知らないっっっ/////」
「まぁまぁ、香ちゃん。ココはひとつ、諦めが肝心……ってコトでv」
ニヤリと笑うその顔は、もう、先ほどの優しさのカケラもなくて。
そうこうしてる間にも、ついにソファの端まで追い詰められた。



「香……誕生日、おめでとう」
いつになくマジな瞳で見つめられて。
ウソでも冗談でもない、真っ直ぐな瞳に見つめられて。
優しい色いっぱいに包まれたリョウの瞳が近づいて来て。
この瞳に見つめられて逃げられるほどの、余裕も無くて。
これも惚れた弱みなのかしら……と、小さくため息をついて。
そのままゆっくりと目を閉じて、リョウからのバースデープレゼントを受け取った。







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閉鎖されたまりばなさんのサイトで初めてこの作品を見た時、「うっわっ////」と、
まるで見てはいけない瞬間を覗き見てしまったような…そんな風に激しく照れてしまった私です。
何だか原作以降に訪れていたであろう、二人の“らぶーv”な日常を、こっそり垣間見てしまったようで…。(苦笑)
そんな飾らない二人の、二人だけのバースデー。ほのかに流れる、クリームより甘い空気に酔いしれましょうv


END    2007.3.26