●サンタがウチにやって来た●



久々にドジを踏み、ベッドで迎えたクリスマス。

簡単な擦り傷と思って甘く見てたら、敵さん、何等かのクスリを使ってやがって。
気がつきゃ膿をもち、久方ぶりに高熱で寝込むだなんて、ドジを踏んじまった。
暮れも押し迫り、裏業界も色々せわしなくなってきて……ってぇと、えらく物騒な話だが。
それがこの、新宿って街の本性さ。



だが、何かとイベント好きの香が、12月の声を聞いたと同時に、
いとも楽しそうに支度をしていたのを見ていただけに。
今、俺の横で。
俺がケガを負ったのは、自分が頼りないせいで……と、自分を責める、その悲しそうな顔を見るにつけ。
あぁ、ケガするにしたって、何もこの日に……と、苦いため息をこぼす。



それでもどうにか浮上した香の手によって、チキンにケーキ、
ケガ人だけどと、大目に見てもらってのワインにと。
そして、日頃から慎ましい生活を強いられてる冴羽商事に似つかわしい、
昨年のシーズン明けに特価で購入した、小さな小さなクリスマスツリー。
今時ンなサイズ、どこのウチにも無いだろうというそれを、
デパートの隅っこで見つけた時の、あの、香の喜々とした輝ける瞳……。
あれは未だに忘れられん。(苦笑)



そいつも忘れずに……と、いそいそと俺の部屋に持ち込み、窓辺に飾り。
たいしたケガでもないのに、「絶対安静っ!!」という香に押さえ込まれた俺は、ベッドの上で。
そして香は、そんな俺の枕元にちょこんと座り。
俺の部屋で、小さなミニテーブルを囲んでの、ちょっとしたクリスマスパーティーとなった。
悪友たちと賑々しく騒ぐのも、いいけれど。
たまには二人、こんな夜があってもイイよな……?



夜も更けて、せっかくのクリスマスだというのにその性格から、
すべての後片付けを終えたらしい香が足音を忍ばせ、そっと部屋に入って来た。
ゆっくりとベッドに近づき、そっと俺の額に手を当て、熱を計り。
その掌に伝わる安定した温みに、ほぅと微笑む様を、薄目を開けて盗み見る。
どんな時でも、俺のコトを一番に考える香。
そんな優しさに包まれている自分が、妙にくすぐったかった。



平熱に戻り、安心した香が、俺の額に掛かる髪をそっと撫であげ、
小さく「おやすみ」と呟き、立ち去ろうとする。
その去り行く気配を、逃がすものか……と、寸でのところで、捕まえた。



「………リ、リョウっ?!」
ガバとその身を起こし、その柔らかな温もりを抱き留めれば、大きな目を殊更見開いて喚く香の姿。
それをヨソに、いけしゃぁしやぁとその身を横たえ、覆いかぶさった。
甘いぜ、香。
俺の手中範囲内に入りながら、そう易々と逃げおおせるとでも思ったか?
不肖・冴羽リョウ。
たとえ病み上がりだろうと、せっかくの獲物を逃がすようなドジは踏まないぜ。



しばらくぶりの白く細い首筋に顔を埋めれば、風呂上がりの石鹸の匂いが、より香らしさを引き出していて。
もう限界……とばかりに、唇を押し当て、むしゃぶりつけば。
ケガ以来ご無沙汰だったナニに、すぐさまグンと熱がこもる。



「ちょっ……ちょっと、リョウ!!いいかげん、バカはやめ……っ!!アンタ、ケガして……ん……っ!!」
手強く抗いの言葉を寄越すものの、ひとたび唇を合わせれば、
その身体から徐々に力が抜けていくのは、明白で。
堅苦しい理性に相反するように、かわいらしい舌がちろと俺を出迎えた。
それに力を得、香も俺を待っていたのだという核心を確固たるものとしたら、もう最後。
あとはその甘く柔らかな身体をさらに味わうべく、行動に移すだけだ。



「ちょっ……ねぇ、リョウってば………っ!!」
真っ赤になったふくれ顔。
ンな表情すらも魅力的に思えるんだから、俺ってヤツも、相当だ。(苦笑)



「何って……今日はクリスマス。いいコにしてたら、サンタがプレゼントくれんだろ……?」
そう言いながら、身をよじる香にニヤリと意地悪く笑えば、
窓辺に飾られたポインセチアより、赤く染まる柔らかな頬。



「……な……っ!!/////」
「熱がひくまでは絶対安静って、おとなしくお前のいいつけどおりに寝てたんだ。
そんないいコの俺に、サンタがプレゼントをくれないってぇワケはねぇよな……?」
「……あ、アンタ、やけにおとなしくしてると思ったら、そんなコト考え……っ!!」



何をどう喚こうが、ひとたび"その気"になったら、もう止められやしない。
新宿のタネ馬と呼ばれた、この俺が。
おとなしくお前のいいつけを守り、何日ガマンしたと思ってるんだ?
いいかげん、ご褒美貰ったって、悪くはねぇぞ?



「………ン、もう……////」
くすくすと楽しげに笑む俺の下で、観念したらしい香がぷいと視線を反らし、
諦めの吐息をこぼしながら、その身体から力を抜いた。
それを了承の意とばかりに、頬と同じくらい赤く染まった小さな耳に唇を寄せ、小さく小さく囁いた。



「メリークリスマス、香」



窓の外、今にも粉雪が舞いそうな冷たさに反するように。
二人の熱い夜が始まろうとしていた。




END    2007.12.21