●present is…●



「はぅ……」私、槇村香は、近頃何かとため息が多い。
それもそのはず。
ふいに舞い込んだ仕事で押せ押せになってたリョウのバースデーを、どうしたものかと、悩んでいるの。
気付けばもう、私の誕生日も目の前で。
この際二人の合わせてのお祝いにケーキでも…と、思うケド。
何だかそれじゃぁ、物足りなくて。
たとえウザイと思われたとしても。
モノに執着心のないヤツだってコトは、わかってるケド。
それでもやっぱり何か……そう。
私の想いを、ちゃんとした"カタチ"にして贈りたかったの。



そんな風に、リビングでテーブルに置かれたコーヒーとにらめっこしながら頭を抱える私の前に。
「……ん」と、いつの間にか近づいてきたリョウが、その性格そのままに。
あまりに無遠慮に差し出してきたのは、シンプルなギフトボックス。
「……なぁに?」思いあたる節がなくて小首をかしげれば、ニヤリと笑われた。
「バースデープレゼント。まぁ……ちょいと早いがな」
そう言っておきながら気恥ずかしくなったのか、ふいにそっぽを向いてしまう。
でも、視線を外したせいで私の目にさらされるかたちとなった形のいいその耳が、ほんのりと朱く染まって見える。
それを口にしたら、「何言いやがる」って、怒られるかもしれないけど。
何だかちょっぴり、かわいいかった。



「そんな……だってリョウの誕生日だって、まだちゃんとお祝いしてないのに……」
戸惑う私の髪をくしゃりと撫であげながら、リョウが苦笑まじりに言葉を紡ぐ。
「……まぁ、いいから開けてみろって」
「……う、うん……」
リョウからのプレゼントなんて言うから、いったいどんなのが入ってるのかと、思わず身構えちゃったけど。
きれいに巻かれたリボンをするりと解いた中から現れたのは、上下の下着、一揃い。
真っ白な生地に、やわらかなレースがあしらわれていて、意外とシンプル。
でも、可憐で小さく細かな花が幾重にも編み込まれて。
所々にはスワロフスキーまであしらわれて、とても品がよさそう。
一目でかなり手の込んだシロモノだということが見てとれた。



誕生日のプレゼントに下着なんて……って、さすがにびっくりはしたけど。
でも、リョウならそれもアリかな……と。
それに悔しいケド、なかなかいい趣味。
さすがは天下のもっこり男・冴羽リョウ……と、変なトコロで感動してしちゃう。(苦笑)



「こんな……こんなの、いいの?だって私、まだリョウの誕生日に何も……」
「いつも世話になってるんだから、たまにゃいいだろ。
それに、釣った魚に餌をやらないのは日本人くらいだって、どっかの金髪バカがうるせぇからな」
フンと鼻息荒く、そのくせそっぽを向きながら、照れ臭そうに頭をがしがしとかきむしるリョウが、何だかかわいい。
「リョウ……」
嬉しい半面、どうしたものかとまだ戸惑う私に、リョウはみなまで言わせず。
今度はしっかと私の目を見すえて、おもむろに口を開いた。



「ふっ……じゃぁ、こうしよう。そいつを着たお前をおいしくいただけりゃぁ、それで今年の俺の誕生日プレゼントはチャラだ」
「………なっ///」
「お前のコトだ。また俺へのプレゼントはどうしようかって、何だか色々考えてんだろ?
ンなモン、ぜぇ~んぶ却下。お前で十分♪」
「そっ、そんなコト言ったって、それじゃぁ……」
"それじゃぁいつもと一緒じゃなぃっ///"……なんて、いくらホントのコトとはいえ、恥ずかしくて言えないままに口ごもれば。
「俺がいいって言ってんだから、それでいーの。
それに、女に下着を贈るってのは、それを脱がすってぇコトが前提だからな。
まぁ俺としても、ハナから下心はバッチリだし?」
ふふんと悪戯っ子のように笑うリョウに、ぷぅとふくれてみせれば、その瞬間、真剣な眼差しをよこしてくる。



「それに……だ。そいつを脱がすヤツが、俺以外にいるワケもねぇしな」
"ンなヤツ、他にいてたまるかよ"
……なんてコトを心の内で思ってるのか、ちょっぴりすねながらも、あくまで自信満々なリョウが小憎らしい。
「……ってコトで……だ。今度は俺がプレゼント貰う番だな。
今夜はお前の心づくし、たぁ~っぷりといただくからな。期待してるぜ、香ちゃん……?」
そう言って、リョウは私の返す言葉になど耳も貸さず。
呆れ果てる私を尻目に、何とも楽しげに微笑みながら、ゆっくりとリビングをあとにした。



「…………」
これだけのモノを貰っといて、私からは気持ちだけってのも心苦しいし。
生来の性格から、そのままにしてもおけなくて。
それに何より……女が廃る。
「…え~い!そこまで言うなら、やったろうじやないのっ!!」
槇村香、一世一代の大決心。
リョウがそれでいいと言うのなら……望んでるのなら。
何より、本来物欲ゼロのリョウが、"それ(わたし)"を欲しいと言ってくれてるのなら……
それに応じないってぇ手は無いわよね?



そうと覚悟を決めたが早いが、またいつもの悪いクセで、そのまま意気消沈する前に、と。
目の前に置き去りにされ、とうに冷めてしまったコーヒーを一息に飲み干して。
件の真新しい下着を胸に抱え、唇をキュッと引き結んで。
今夜の二人に備えるべく、そのまま勢いよくバスルームへと飛び込んだ。
私の気力体力がドコまでもつのかは、神のみぞ……というか。
すべてリョウの手の内だけど……ね?(苦笑)




END    2009.3.31