●ヘクセンハウス●



12月に入ってからというもの、街のあちこちから聞こえてくるジングルベルの曲に、いやがおうでも気分は浮足だって。
今年は美樹さんに教えてもらったヘクセンハウス……屋根や柱がクッキーやマジパンの、お菓子の家を作ってみようと思いたった。
教えられたとおり、型紙に添って一枚一枚、クッキーを焼いていく。
壁はシンプルなバタークッキー、屋根は少し濃いめのココア味。
窓はすりおろした人参たっぷりのキャロットクッキーで格子柄にして、ドアの取っ手部分にはドライチェリーをつけてみた。



それぞれのパーツを揃えたあとは、組み立て作業。
ただのクッキーだったものが次第に立体的な形を造っていく様は、見ていてとてもわくわくした。
玄関脇には少し焦がし気味にしたココアクッキーを束ねて薪束をつくり、
濃いめの抹茶を含ませた緑色のツリーには、オレンジピールやマーブルチョコで飾り付け。
もちろん、煙突も忘れずに。そして仕上に雪がわりの粉砂糖を降りかければ、
はじめはドキドキと心配してた、小さなお菓子の家の出来上がり。
ちょっぴりいびつなのは……まぁ、ご愛嬌ってトコロで我慢してもらわなきゃ。(苦笑)



「これでよし。あとは最後に……」と、あらかじめ作り置いた、メレンゲで出来たサンタを庭先に見立てた台座に飾り。
それを出迎えるお菓子の家の入口には、男の子と女の子。
そしてその間にもうひとつ……一回り小さな男の子を、そっと立たせた。
「これを見たら……ふふっ。リョウ、どんな顔するかしらね」



日頃ぶっきらぼうな人だけど、その心根は誰よりあたたかいと知っている。
いつも一匹狼をきどってカッコつけてるケド、本当は誰よりさみしがりやで傷つきやすい人だと、知っている。
だから……そんな人だから、好きになった。
一緒にいたいと……生きていきたいと、そう思ったの。
ナンパを除けばひどく無口で口下手で、その心根を見せない、ポーカーフェイスな人だけど。
"その瞬間(とき)"には……いったいどんな表情(かお)を見せてくれるやら。



「楽しみ……だね」
慌てふためくであろう、その瞬間を目に浮かべて、ふふふと笑う。
ねぇ、リョウ……?もう一人ぽっちじゃないんだよ?
二人でも、ないんだよ……?
まだ小さなふくらみにもならないお腹にそっと手を添え、くすりと笑えば。
窓辺に飾ったクリスマスツリーが、やさしい光で応えてくれた。





END    2010.12.24