●オトナの会話●



「普段の会話が、メシ・風呂・寝る、なんて、やってらんないわよね~」
高校の時、絵梨子とそんなこと話してたっけ。
どれだけ激しい恋愛結婚でも、歳を重ねるごとにただの同居人になり、
必要最低限の会話しかなくなるんだ……と、どこぞで仕入れてきた絵梨子が、知ったかぶりに話してた。
アニキと二人、貧しくはないけれど、生きていくのに一生懸命、
恋愛問題なんてのには、とんと疎かった私だけど、忙しい時のアニキが話しのそれに近い感じで。
二人きりの兄妹、お互いをわかってはいるものの、時々口喧嘩をしたりしてて……
それで何となく共感したんだったかな、と。
そんな風に記憶している。



記憶は薄れつつ、そんな薄っぺらい関係の、悲しい大人にはなりたくないなと思ってたのに。
それなのに、今の現状はといえば……。
「香ぃ~今日のメシ、何?」
「おい、風呂沸いてっか?」
「ンなモンあとにして……もう寝るぞ」
あの時絵梨子と、嫌悪感たっぷりに、散々けなした言葉に近いコトを言われてるのに……
なんだかんだ言って、それをうれしいと感じてる自分がいたりするの。



こちらの都合関係なく、自分の腹時計の感じるままにご飯を要求するのでさえも。
はじめの頃こそ、「あたしは飯炊き女じゃなぁ~いっ!!」と、怒ってたけど、
文句言いつつ、残さず食べてくれるのが……うれしくて。
そのあとも、お風呂→寝る→そのまえの……(きゃっ)///
という方程式が成り立つような関係になってからは、
リョウのお風呂を確認するセリフの裏に隠れた意味合いを感じて。
そのセリフとともに向けられた、熱っぽい視線を感じて……
そのいちいちに、とくりと心拍数が跳ね上がるの。



あんなに無茶苦茶けなしてたのに……あんなに毛嫌い、してたのに。
それが今、大人になって、こんな風に感じるようになるなんてね。
考え方、感じ方は、人それぞれと言うけれど……
実際、歳を重ねて、共に暮らして、そうして変わっていくものなんだろうと思った。
でも、それにしたって、こうも180度、考え方が違ってくるなんてのは……
どうなのかしらね、もう。(苦笑)




END    2017.3.16