●サンタクロースが来る前に。●



巷にクリスマスソングが響く中、リョウは出掛けててアパートには私一人だというのに、

なぜか周囲を気にして、びくびくと。
何も悪いコトでも、恥ずかしいコトしてるワケじゃぁないのにね、と、
誰に言うでもなく、苦笑をもらした。



物欲のないリョウへのクリスマスプレゼントは毎年悩むトコロなんだけど、
今年選んだのは、キーケース。
アパートの鍵とか、車の鍵とか、日常使いしてるものだから、
かなり傷んできてたのは気がついてたんだけど。
下手すりゃあいつの場合、鍵なんかなくたって、
コートやベルトのバックルに仕込んだ針金やピンなんかで、ちゃちゃっと開けちゃうんだろうけどね。



でもまぁ、ミニの鍵はともかくとして、アパートの鍵は、やっぱり特別。
リョウと私……二人が住む家の鍵ってのが、ポイントよ。
よそで愛想振り撒き放題のリョウだけど、帰って来るのは、"ココ"。
リョウと私、二人が住む家の鍵……っていう、
ちょっとしたマーキングの意味も兼ねて……なんてね///



だから今年は、その鍵をまとめるための、キーケースを選んだの。
ちょっと傷めた感じのするハードなレザーに、銅色の金具がアンティークで、
それでいて、手にしっくりと馴染む感じが心地よくて、店先で一目惚れした一品。
きれいにラッピングされた包みは、真っ黒な包装紙に金色のリボンが巻かれ、
クラシックで甘すぎない感じも、リョウにぴったりだった。
これを手渡した時、リョウはどんな顔をするかしら。
これがリョウの無骨な手に収まった時、どんな笑顔を見せてくれるかしら……。
そう思ったら、もうその時が待ち遠しくて……早く見たくて、うずうずしちゃったわ///



問題は……クリスマスまで、ドコに隠そうかというトコロ。
目先のきくヤツだから、キッチンの引き出しとか、冷蔵庫、
洗面所なんてのに隠したトコロで、すぐに見つけちゃいそう。
そんなワケで、どうしたモンかと悩んだ揚句に選んだのが……私の部屋の、ベッドの下。



リョウと"そういう関係"になってから、よほどひどいケンカをした時とか以外、
ほとんど使わなくなった、今やすっかりクローゼットと化してしまった、私の部屋。
でも、相変わらずあのバカは時々下着を漁ってる節があるので、
タンスの引き出しやクローゼットは、NGで。
でもベッドの下なら、さすがにあいつも見ないでしょう?(笑)
我ながらナイスアイデアとほくそ笑みながら、よいしょと腰を屈めば、
ベッドの下、少し奥まったトコロに、"何か"があった。
「……?」



よいしょと腕を伸ばして、その長さ、ぎりぎりのトコロ。
ベッドの底板で、ほっぺたに擦り傷が出来そうなほど、頑張って腕を伸ばして引き寄せた"それ"は、
最近駅前に新しく出来た、ジュェリーショップの紙袋だった。
私じゃぁないし、すると……リョウ?
そういや少し前、店先にディスプレイされてたかわいいピアスに、しばし見入ってたっけ。
まさかリョウ、それで……?



それにしても何でその隠し場所がココなのかと、頭をめぐらせる。
まぁ最近は、週ごとに各階を掃除していくし、
今はクローゼットと化してしまったこの部屋は、風通しこそすれ、
ベッドの下まで掃除するかといえば、それはそう、頻繁ではなくて。
入居者がいなくて締め切ってばかりの下階を、熱心に掃除するのに比べたら、
その優先順位は、そんなに高くはないワケで。
順番からいえば……もしかしたらココ、クリスマスまで掃除しないハズだったかも。
まさかとは思うケド、そんな私の行動パターンを見越したリョウの仕業なのかと思うと、
思わず笑みがこぼれてしまった。



とりあえず……先客がいるのなら、私は別のトコロを探さなきゃ。
そしてこの小さなプレゼントには、気付かなかったコトにして。
元のように戻しとかなねきゃね。
生来、嘘のつけない性格だケド、素知らぬふりして、
クリスマスまで、うまく隠し通せていけるかは、ちょっと不安が残るけど。
でも……せっかくの、リョウからのプレゼント。
種明かしがバレてしまったら、お楽しみは台なしよね。



リョウが手にするその日まで……リョウが手渡ししてくれる、その日まで。
慣れない演技を、どうにか頑張ってみましょうか。
広い世界に、たった一人の……私だけのサンタクロースが、来るまでに。




END    2013.12.21