●Birthday Kiss●



甘いもの苦手な誰かさん用にと、フルーツの甘さだけにして、

極度にお砂糖を控えた、さっぱりめの生クリームでつくった、バースデーケーキ。
はじめはどうしようかと思ったケド、やっぱりお祝いモノだから、と、チョコでつくったプレートも用意した。
゛Happy Birthday RYO゛なんて、さすがに照れ臭かったけど。
でも、誕生日を楽しみにした幼い頃の記憶とか、お祝いしてもらった時の、くすぐったいようなうれしさとか。
それらを知らずに過ごしてきたリョウに、そんな小さなしあわせを、少しでいいから感じて欲しかったの……。



で、いつになく無愛想な男は、お誕生日用のディナーの真ん中、
デンと構えたバースデーケーキに、瞬時、不機嫌そうな顔。
まぁそのあたりは予想してたケド、それでいてやっぱり気になるのか、
視線の先には常にケーキをちらちらとらえてる様がかわいくて……。
食事の間、笑いをこらえるのに必死だったわ。(苦笑)



そしてささやかなディナーを終え、デザートのケーキにナイフを入れていく。
お行儀悪く、ケーキの端のクリームを指ですくって、口に含み、意外にも甘くなかったのに驚いたリョウは。
「……ふん。これくらいなら、食ってやってもいいぞ」
と、どこぞの王様だというほどの、高飛車な態度。
でも、唇の端に残ったクリームを、肉厚な舌が名残惜しそうに辿る様は、
意外にも、わがままな男のお気に召したみたいで、くすりと笑った。



「……ンなクソ甘いモン、半分でいい」
せっかくだから、と、切り分けたケーキの上。
リョウの分に、お誕生日のプレートを乗せてあげようとしたら、
「ンなモン……ガキじゃねぇんだから」と、断られた。
そのくせ、半分でいい、なんて、意地っ張りにも程がある。
もう、丸きり子供、まんまじゃない。(苦笑)
「……そう?じゃぁ……」
と、肩をすくめて、広げた紙ナプキンの上にプレートを乗せ、包丁を入れようとしたところ。
横から伸びてきた無骨な指先が、ひょいとそれをつまんでいった。



「……なぁに?半分にするんじゃなかったの?」
ぷぅとふくれる私に、にやりと笑って。
口にくわえた゜それ゜を、指先でとんと突きながら、からかうような笑みをよこす。
「ひゃから、はんふん……らろ?」
くい、と、こちらによこした口先からは、肉厚な唇に包まれるように、゛RYO゛の文字が見え隠れ。
その唇の熱っぽさも、熱く奪うようなくちづけも。
何より、それらをもたらす張本人の意地の悪さも、
誰より優しく私を包み込んでくれる、熱く秘めたい想いの丈も。
十分過ぎるほど知ってるから……頬が熱を帯びるのを、とめられなくて。



「……ばか///」
と、ひとにらみするものの、それはカケラほどの効果もなく、
゛ほら、早く゛と、急かすように口元を寄越してくる。
しかたないなぁと、呆れた表情(かお)に、照れ臭さを隠して唇を寄せれば、
パキリとチョコレートが割れた瞬間、あたたかな唇に迎えられ。
大きな手にがっしりと頭を抱えられ、貪るようなくちづけへと変わっていく。
頬を辿る指先の優しさにうっとりと目を閉じれば、もう何も逆らえるはずもなくて。
それはそのまま、甘い夜へと続く道しるべとなってしまった///




END    2014.3.26