●いちご日和。●



「これからあんたの誕生日は私が祝ってあげる」

そう言ってから、もう何年がたったかしら。
毎日のように軽口の応酬、もっこりの撃退ばかりだけど。
「こんな俺でいいのなら、家族の一人になってほしい……」
普段弱音なんか吐かないリョウが、珍しく素直に口にした想い。
その言葉を心の支えに、今日まで片時も離れず、ずっと傍にいた。
そして足手まといになりながらも必死についていく私を、リョウはあたたかく見守っていてくれたの。



はじめの頃、リョウの年齢がわからなくて、ケーキをつくるのに躊躇していた時期もあったし、
ここ最近は、私も自分の誕生日に「二十●歳です」、と、公言出来るほどの度胸もなくなって。
それならば……と、リョウと私の誕生日を、一緒にお祝いしようというコトにしたの。



リョウは正確な年齢がわからない、私は歳の数を数えるのが嫌、というコトで、ロウソクは飾らず、
二人出会ってからの年の数だけ、ケーキにイチゴをのせていくことにしたの。
これは意外にもリョウにも好評で、毎年イチゴの数を数えては、
「カオリンも●年前は可愛いげがあったのに……」と、バカなコト言ってるけど。
それでもイチゴを見ながらひそかに指折り、今は遠くなった過去を振り返ってるのか、
ふ……っと小さく微笑む時があって。
そんな風に二人、出会ってからのこれまでのことを思い出すのは、ひどく楽しいひとときだった。



「ねぇ……このままいくと、今に生クリームもない、イチゴだけになっちゃうんじゃない?」
真っ白な生クリームを覆い隠すように、真っ赤な大粒のイチゴが並ぶ様は、壮観で。
春らしい、イチゴの甘酸っぱい香りが鼻をくすぐるけど、あふれんばかりのイチゴが少し、窮屈げ。
「いっそのことタルトにして、小さく切ったイチゴを上に飾ってこうか。そしたら……」
「……別に?いーんでない、これで」



話しの途中で重ねられた言葉に視線をあげれば、にやりと笑う、リョウの笑顔とぶつかって。
つまんだイチゴの先で生クリームをひょいとすくって、私の口に押し込んだ。
「……ぷっ……タコみてぇ」
「なっ……あんたがイキナリ……」
もぐもぐと、口いっぱいに頬張ることになったイチゴを噛み締めれば、
ケーキの上に居並ぶ真っ赤なイチゴの先端を、無骨な指先が軽く突いて、もてあそぶ。
「小さく切っちまったら、何年たったか、わかんねーじゃん?」
そしてクリームをすくわないままに、つまんだイチゴを自分の口に放り込み、
軽く咀嚼したかと思えば、ごくりと飲み下して、にやりと笑った。
「……だろ?」



大粒のイチゴが居並ぶ様は、ケーキらしいかわいさの、カケラも見えないけど。
イチゴがずらりと乗っかって、まるで要塞にも見えるけど……。
それでもやっぱり、リョウも同じように感じてくれてるのが、うれしくて。
それでも素直じゃないあまのじゃくな性格では、この想いを言葉にするのは難しくて……。
大粒のイチゴをくわえたまま、顔をあげ、いぶかしげに眉をあげるリョウに向かって、瞳を閉じた。




END   2014.3.31