●プレゼントを見つけたら。●




「……ったく。やっとたどり着いた我が家かな、っと」
軽く倦怠感の残る肩周りをぐりぐりと手荒げに動かして、大きく一度伸びをしてから階段をあがる。
せっかくのクリスマスなのに……と、いつもなら泣いて喜ぶ程のXYZに、香は唇を尖らせて。
それでもドタバタした依頼を片付けるには片付けたのだが、
こじれにこじれた後始末をつけて帰る頃には、とうとうイブになっちまった。



後始末だけならと、美樹ちゃんやタコたちとキャッツでクリスマスのパーティーを予定していた時間に
どうやら間に合いそうな香を先に帰したはいいが、耳の遠いじーさんとばーさんを相手にしたら、てんで話しがまとまらなくて。
依頼を終えた礼だのなんだのと、裏山で取れた野菜なぞを持たせようと引き止めてくるのを、やっとの思いで振り切った。
……ったく……どうせなら、もっこり美人の孫娘とか出してくれりゃぁいいのにな。(笑)



そんな苦笑いを浮かべつつ、イルミネーション煌めく街中に愛車をかっ飛ばしてみたが、
やはりクリスマスということもあり、どこもかしこも渋滞ばかり。
ようやく愛すべき歌舞伎町界隈に車を滑り込ませた時には、あと少しで日付が変わるという頃合いだった。
さすがにタコたちもお開きにしてるだろうと車をまわせば、案の定、店はひっそりと静まり返り。
それなら不機嫌極まりない顔をしているであろうパートナーのいるアパートへと、そのまま急ぎ、ハンドルを切った。



やっとの思いで我らがくたびれたアパートに戻れば、
見上げたリビングの窓には、カーテンの隙間から蛍光灯の灯りが洩れ出でて。
また寝ずに待ってるのかと舌打ちしながら玄関を開ければ、
部屋の中はひっそりと静まり返り、年の瀬を前にした寒さが殊更身に染みた。
そのまま足音を忍ばせながリビングに向かえば、テーブルには俺の帰りを待ち受けたかのように、
チキンやらサラダやらワインのグラスやらがきれいに並べられていた。
タコんトコロから残りものでもまとめて来たんだろう、
タッパー片手に、せっせと料理を詰め込む香を思い浮かべて、思わず今年一番の笑みを浮かべた。



そしていつもなら、定位置であるところのソファにいるハズのその姿が、見当たらず。
そのままぐるりと、決して広くはないリビングを見回して……
窓の近くに飾った、冴羽家の身の丈以上にどっしりとしたツリーの、その横に。
ちょうどソファに隠れるような、その場所に……ブランケットにくるまって穏やかに眠る香を見つけた。
「今年のツリーはちょっとシックにしてみたの」
と言っていた、ピンクと藤色をベースにした、落ち着いたトーンのツリーの、その横で。
それに合い反するように、まるで幼子のようにすやすやと眠る香はかわいらしく……
そして濡れたような朱い唇が半開きになる様は、どこまでも艶めかしく。
思わずごくりと、喉を鳴らした。



「まーったく。そんなに風邪ひきたいのかね、お前は」
額に掛かる柔らかい猫毛をそっと払ってやれば、くすぐったそうに首をすくめて身を震わせる。
「こんな日まで真面目に仕事してた俺に、サンタのじーさんからプレゼント……ってトコロかな。
何しろ昔っから、クリスマスのプレゼントはツリーの下にあるって言うし……?」
と、我ながら、らしくない呟きに思わずくすりと笑みをこぼした。
何やらしあわせな夢でも見てるのか、香の口角はやわらかく上がっている。
幼子のようにやわらかな笑みを浮かべながら眠る香につられて、思わずこちらも微笑んでいた。



「……ほんじゃありがたくプレゼントを貰って、明日の朝、楽しみに開けるとするかな♪」
明日の朝、目覚めた香がどんな顔するかなと、胸元にゆるく結ばれたリボンに目をとめて。
不埒な笑みを浮かべながら、鼻歌まじりに、眠り姫が起きないようにとそっと抱き上げた。




END    2015.12.23