●ばーすでーぷれぜんと。●



「たっだいまぁ~」と帰宅すれば、仏頂面の、いつになく渋い顔した香に出迎えられた。
出掛ける時は特に何も変わったコトはなかったし、特に何かヤバいコトした記憶もないのだが……。
「……どした?」
それとも知らない内に何か香の機嫌を損ねることをやらかしちまったかと、恐る恐る問いただせば、
フンと恐ろしいほどに鼻息荒い、地の底に響くような返事が返ってきた。



「……見てよ、これ。ほぉ~んと、モテるお方は大変ねっ」
見ればリビングのテーブルの上には、ありとあらゆる色でラッピングされた包みの数々。
その大きさも形もそれぞれで、今にもテーブルから零れ落ちるほどになっていた。
「リョウちゃんに……って、あんたが出てったあとからひっきりなしに来客があって。
次から次へと、この有り様よ。おかけで今日は一歩も外に出られなかったわ?」



どうやら街のヤツらが気をきかせての、俺への誕生日プレゼントらしい。
手にとってみれば、それぞれ送り主らしい、個性に満ちたものばかり。
年代物のヴィンテージワインには”今夜、香さんとのディナーにどうぞ”とか、
彩りよく盛られたオードブルには”楽しい夜を”とか、その他諸々、よりどりみどり。
ははぁ~ん、これじゃぁ自分の出る幕がないじゃないかと、おかんむりってトコか。
俺的にはこんなモンいくら積まれようが、香と共に過ごせれば、それだけでいいんだがな。



「なぁ……”香さんとお待ちしてます”って、こないだ新装OPENしたラブホの割引券ついてんだけど?」
「……なっ……?!」
「おんやぁ?これまた嬉しい、コンちゃん1ダースなんてのもあるぜ?”香ちゃんとどーぞ”だって。
こいつは気が利くよな、あって困るモンじゃなし。なんたって実用的だしぃ~?」
「ぎゃぁーっっっ‼‼(爆)」



三軒先まで響き渡りような雄叫びを上げつつ、真っ赤になった香がリビングを出て行くや否や、
持ってきたゴミ袋に”その手のモノ”らしき数々を、ものすごい顔してことごとく放り込んでいく。
「……あぁ~あ、もったいな」
呆れ顔で肩をすくめれば、「あんたの交友関係、どーにかしなさいっ‼‼」と、これまたものすごい形相で息切れ切れに怒鳴られた。
やれやれ、これ以上怒らせたら、今晩の熱い夜が台無しになりそうだ。



香が密かに、何がしかのプレゼントを用意してるらしいのは、すでに確認済み。
それにともなう熱ぅ~い夜を考えたら……これ以上香を怒らせるのは、微妙なトコロ。
さてさてどうしたモンかなと、とりあえず、ゴミ処理行きを免れたオードブルのから揚げを摘まんで口に放った。




END    2018.3.27