●slowly & slowly●



一年365日。

文句とハンマーの嵐ではあるが、片時もはなれるコト無く、香は俺の横にいる。



はじめは戸惑った、図々しいまでのその存在。
底抜けに明るい笑みと、限りなくしつこいまでのお節介。
人の生活様式のいちいちにチャチャを入れ、平気でズカズカ入り込む。
自分が年頃の女だってぇ自覚はドコへやら。
男の裸を見て頬染め恥らうどころか、
「アンタはどうしていつまでもバカなカッコしてるのよっ!!」
と叫んで、ハンマーを投げてきやがる……そんな女。



けれど、いつのまにか。
ふとした仕草に、女らしさを感じさせ。
ふとした瞬間には、男のツボ、ガンガンと刺激する女の顔を見せやがる。



そうすっと……だ、な。
俺の方も、妙にアイツのコトを意識しちまって。
ナニが何で……というコトも、ままあって。
だが、ンなこっ恥ずかしいコトを覚られてなるモノか、と。
暴力女だの男女だのという、言い訳めいた情け無いウソで己の本心を塗り固め……
そしてまた、アイツを泣かせてしまう日々。



シュガーボーイだなんて言って、ただの預かりものだなんて言ってた頃が懐かしい。
あの頃の方がどれだけ楽だったか……なんてコトは、今更だが。



それでもその大きな瞳を、やわらかな笑みを向けられて。
何だか無性にシアワセってモノを感じている俺もいて。
その頼りないまでの、白く細い手首を掴み、こちらへと引き寄せようとする……そんな俺もいて。
そのくせ、そんならしくもないコト、するんじゃねぇーよと、自分自身にセーブを掛ける。



バタバタバタバタ、毎日が空回り。
それでも香は笑ってる、俺の横で。



そのとろけるような笑みに、俺のなけなしのブレーキも緩みっぱなし。
周囲の悪友どものセリフじゃぁないが、俺の限界もそろそろというトコロ。
だが、そんなイキナリ変われるほど、素直じゃぁなくて。
もう少し、もう少し……と、自分自身に言い聞かす。



ともにマジな恋愛には初心者の、俺と香。
焦らずゆっくりと、自分のペースで行きゃぁいいんだよな……?
そう……コトを急いで、ケガしちゃおしまい。
人生はslowly & slowly。
急いてはコトを仕損じる……先人のありがてぇ言葉だぜ。



そんな言い訳めいたセリフを吐いて。
そしてまた、今日も香との追いかけっこの一日が始まる。




END    2007.3.16