●speedy & slowly●



一年365日。

仕事もせずに、ナンパに明け暮れ。
気づけば女の子のお尻ばかりを追い掛け回す大馬鹿者に、天誅のハンマーを振り下ろす。
そんな毎日に嫌気がさして、ほぅと大きなため息をついた。



そもそもの出会いは、最悪だった。
少年じみていたからと、シュガーボーイ(ぼうず)と呼ばれ。
その後の再会にいたっては、同じく男と間違えられて、激しいビンタまでいただいた。
アニキの死を経て、共に暮らすようになってからだって。
パンツいっちょは当たり前、時には平気で全裸で対峙。
どーせ私のことなんか、年頃の女だなんて、これっぽっちも思っちゃいないんでしょうよっ!!



そうは言っても、いつしか視線はその背を追って。
気づけばその姿を、その気配を、必死になって探している自分がいたりする。



はじめはアニキの後を受けてパートナーになったけど。
女にだらしなく、ナンパばかりのへなちょこ男だと思ったけれど。
そのホントのところを……その真の部分を垣間見てからというものは。
何が何でも私を守り抜いてくれる、その大きな腕を、大きな背中を知ってからというものは……。
気づけば、いつの間にか。
この胸の中、アイツがしっかり住みついていた。



毎日のナンパを皮切りとして、セクハラまがいもしょっちゅうだけど。
女性に対するその仕草も物腰も、悔しいくらいにスマートで。
骨ばった無骨な指も、がっしりとしたその体格も。
少しハスキーに響く甘さを含んだ声も……アニキとは違う、大人の男のそればかり。



だから出会った依頼人、その全てが惚れちゃうのも……わからなくはないけれど。
それに対比するかのように、唯一もっこりしない女というレッテルを貼られても。
どれほどまでに女扱いされなくても、どれほどお荷物扱いされたとしても。
それでも傍に……アイツの傍にいられれば。
私はそれでいいと思ったの。



でも……時として。
すごく優しく穏やかな笑みで見つめられて。
時として、恥ずかしくて頬が染まるほど甘やかな瞳を向けられて。
その笑みを、その腕を。
リョウその人を欲しいと思う自分がいるのを……止めることは出来なくて。
その度に幾度となく、焼けつくような苦しみと一人、戦っていた。



惹かれる気持ちはspeedy。
二人の間はslwoly。



いつまでたっても煮え切らない二人と言われるけれど。
それでも少しずつ、少しずつ、歩み寄ってきているアイツと私。
でもどうしたって、そう急に態度を変えるなんてことは出来なくて。
今まで培って来た年月を糧として、
ゆっくりゆっくり、その距離を埋めて行けばいいんだよね……?



そのあまりに情け無いほどの向上心に苦笑しつつ、
それが何より一番、アイツと私らしいのだと心に思う。
そんなくすぐったい気持ちを胸に、
今日もまた、ナンパばかりの大馬鹿者にハンマーを食らわせた。




END    2007.3.16