●そのまま●




「まったく、リョウのヤツぅ~」

リビングを掃除中、ソファの下から転がり出た、
通称・リョウちゃんコレクションという名の、エロ本の数々。

常々、来客のあるリビングにンなモン置くなと言ってるのに、なかなかその習性は直らなくて。
半ば呆れまじりに容認してるトコロもあるのだケド、
こうして多量の現物を目の前にされては、やはり深いため息を隠せなかった。




それにしても、どうしてリョウのコレクションの数々は、こうも金髪グラマラスなお姉さんばかりなのかしら。
やっぱりアメリカで暮らしてたから?
年齢不詳なヤツだけど、思春期とも言える時期を、ボン・キュッ・ボンのナイスボディに囲まれてたら、
やっぱりそれが"普通"になるのかしら。

「ん~……」
どうしたって敵いやしないのに、ちょっとした対抗心は抑えられず。
胸に両手を添え、そのままクッと寄せてあげてみる。
ん~……悔しいケド、やっぱりあの谷間には敵わない。
当たり前かと納得しつつも、日頃の負けず嫌いが顔を覗かせ、寄せる手にさらに力を加えれば。



「そんなコトしたって、元が違うんだから無駄だろ」
後ろから降ってきて、飛び上がるくらいに驚いた。
「……リョウっ!!」
慌てて振り返って顔をあげれば、くっくと楽しそうに、肩を揺らして笑ってる。
そんな様までがカッコよく見えるから憎らしくて、ぷいとそっぽを向いて悪態を返した。
「ふ、ふーんだ、わかってますよーだ。どうせ私には敵いっこないですよーだ。
日本人の凹凸のない身体より、もっこり金髪お姉さんのダイナマイトボディは、
さぞや気持ちよかったんでしょうね」

「……そりゃぁね。まぁ殺しのあとなんか、どうしたって身体ン中が熱を持ってるワケだし?
荒ぶる熱を女たちにぶつけたコトは数え切れんがな」




売り言葉に買い言葉のつもりだったのに、話しは思いがけない方向へ。
もっこり美女には、百戦練磨。
黙ってればかなりのトコロをいく整った顔立ちは、アメリカでもさぞかしもてたコトだろう。

わかっていたコトなのに、改めてその女性遍歴を聞かされると正直、胸の苛立ちを抑えるのがキツかった。



「だが……本物と作りモンの違いは、どうしようもないしな」
「……作りモノ?」
「そっ。シリコンはどうも手触りがよくないんだよなー」
そう言って、両手でくにくに揉み出す手つきが妙に生々しい。
「シリコ……っ?!」
「あぁ。アメリカじゃぁ美容整形なんざ、ローティーンから日常茶飯事だからな。
街の女たちにしたって、少しでも高く買ってもらうなら、そんくらいの先行投資はするさ」
「…………」
目元をハッキリさせるために二重にするとかいうのは、よく聞く話しだケド。
親から貰った身体に傷をつけるコトに躊躇する私は、やっぱり古いんだろうか……。



「それに、金髪もっこりちゃんも捨て難いケド、アノ時の声は、ちょっと興ざめかなぁ~。
やっぱ日本人のせいかな。もちっと控えめなのが、俺的にゃ好みv」
誰もンなコト聞いちゃいないのに、リョウはかまわず、べらべらとまくし立てる。
あまりに生々しい内容に、段々気分が悪くなった。
「だ・か・ら。どんなに香ちゃんが窪んだバストだろうと、そのまんま。
ありのままのがいいワケよ。……わかる?」

「……どーだか」
人の気も知らずにウインクしながらそう言うリョウは、励ましてるんだかからかってるんだか、サッパリわからない。
プンとふくれるそんな私を、やれやれと苦笑したリョウがくいと引き寄せ、抱きしめた。



「……ったく……これだけ言ってやってんのに、まだわかんねぇの?」
「……何がよ」
「金髪美女も、どんなもっこりちゃんも関係無い。お前がイイっつってんの」
「……ふん。口先ばっか」
「……こんなに素直に反応してるのに?」
むっと見上げてにらみつけた私にくすりと笑ったリョウが、抱きしめた腕にさらに力を込める。
「…………っ!!」
下腹部に押し付けられた熱と圧倒的な固さにびくりと震えれば、
リョウが楽しそうな笑みを浮かべながら耳元に唇を寄せて囁いた。



「今までのどんな女にだって、ココまでは反応しなかったぜ?俺のキモチ、大きさでわかってくれんだろ?」
「ば……っ!!何言って……っ!!」
「責任取れ、よ…?」
そう言って、そのまま有無を言わさず、熱いくちづけが降ってきて。
反論も吐息も飲み込まれる。
苦しくなる度に息つぎさせられ、くらくらしたトコロを抱えあげられた。
「いくら口で言ってもわからないんじゃぁ、身体でわかってもらうしかないな」
「ば……っ!!まだ昼間じゃない。離せ~っ!!」
ポカポカと拳をお見舞いしても、リョウは高らかに笑うだけ。
とりあえず……過去の女性たちは、過去のコト。
今は誰より愛されてるっ……て。そう思って、いいんだよね……?



何度も肌を重ねて、リョウの嘘と本音の区別くらいわかるようになってきた。
今はもう、ちゃんとリョウに愛されてるという自信がある。
でも、過去の女性遍歴を笑って聞けるほどの度量はなくて。
時々こうして、不安になるの。
そんな時、決まってリョウは、こうしてふざけた口調で私を誘い。
そして余計なコトなど何も考えられない程に、深く深く愛してくれる。
いつまでも弱く甘えたな私を、リョウは黙って、フォローしてくれる。
そんなコトの繰り返しで、いつかリョウの過去のすべてを、笑って聞ける日がくるのかな……。



そんな憂える気持ちを知ってか知らずか、優しく細められた黒い瞳が、私を見つめてにこりと笑う。
まだまだ至らないパートナーの私を、そのままでいいと言ってくれたリョウが、切ないくらいに愛おしくて。
「……私も、そのままのリョウが好き、よ」
と、その胸に顔を押し付けて小さく呟けば。
聞こえないと思ったのに、耳聡い男はしっかりと聞き留めたらしく、抱きしめられた腕がきゅっと力を増した。




END    2012.3.16