●ざわめき●



月と竹を背負い、撩があたしを見つめていた。

 

僅かな光で見えたその顔はきっと幾人もの女の人が見た顔なのだろう。

昼間のふざけた顔なんて何処かに置き去りにしてしまった顔。

真剣な眼差しは視線を絡め取って離さない。

喋ることすら出来ないまま、その瞳を見ていた。

 

 

風が竹林を揺らし、ざわっと音を立てる。

緊張した空間を破ったのは撩の口づけだった。

了承済みとばかりに唇が触れる。

 

そうっと、微かに。

 

さわさわと、葉擦れの音がする。

 

葉擦れよりもそっと唇が触れる。

 

その感触に目を閉じた。

 

 

これから先の行為の了承に。

 

 

 

 

「ひゃぁっ」

 

思いの外冷たい手が服の中に入ってきて声が出た。

春とは言え、夜になればまだ冷える。

山の中だから冷え込みが更にきつい。

 

 

脇腹から侵入した手は徐々に上へと這い上がってくる。

その手の感触が温度差のせいもあって、感覚を鋭敏にさせる。

手の動きに感覚が集中していく気がした。

 

割を食うのは身体を支えていた足や力の方で。

地面を踏みしめていた足から徐々に力が抜けていく。

竹林の中では、掴むものも縋るモノもろくにない。

縋るのは撩の身体ぐらい。

首に子供のように抱きついてもいいかもしれない。

だけど今の時点ではまだそこに至るまで理性はなくなっていない。

 

背後の竹にもたれ掛かり、竹がしなる。

息を殺したあたしの替わりに竹がざざっと音を立てた。

撩によってあたしが揺らぐたびに同調して竹が揺れる。

 

堪えた息をしなる竹が吸収してかわりに音を立てる。

幾つも飲み込んだ息を吐き出させようと撩の指が執拗に責め立てた。

肌はとっくに外気に晒されて、寒い風が心地よく感じるほど熱くなっている。

閉じた手にはじわりと汗が出て、もたれ掛かっていた身体が次第にずり落ちていく。

 

 

一つの動作ごとに竹がざわざわと揺れる。

街中にはない静寂では葉擦れの音がなんて大きく聞こえるものだろう。

その静寂の中では自分の呼吸ですらもいつもより大きく思えてならない。

 

たまらず洩らした声が静寂に響く。

 

ざわりと、葉擦れの音と同調して。

 

 

閉じていた手を開いて竹に縋るけれど、手が身体を支えられない。

小刻みに震える身体を見かねたのか撩があたしの手を自分の首に回した。

 

 

その次の瞬間に既に充分すぎるほど熱く、潤った箇所に撩が入った。

 

声にならない声が出る。

貫かれるたびに、動くたびに、声が出て止まらない。

 

 

ざわめく葉擦れの音もかき消えて、自分の意図せずに漏れてしまう声が響く。

息も切れそうなほど急速に上りつめて、堪らず撩の名を呼んだ。

 

必死で縋りつき、名を呼んで。

 

 

竹が大きくしなった。

 

 

 

 

「……どうしてこういうことになるのよ」

予想外の行為に声が不機嫌になる。

 

「気持ちよく声出しただろうが」

 

撩はしれっと答えた。

 

街に戻る車の中で、機嫌はなかなか良くならない。

 

「結局何しに行ったのか分からないじゃない!」

 

「んー?やりに行ったんだろ」

 

ばこっ!

 

運転中にも関わらず、撩にハンマーを叩き込んでやった。

 

 

「あたしはタケノコが欲しかったの!

折角美樹さんから聞いた場所なのに…タケノコ取れなかったじゃないのよ」

 

「朝行けばいいじゃねぇか」

 

「今度は一人で行く。アンタと行ったらまた同じ羽目になるもの」

 

 

タケノコを取りに向かった竹林で、結局本来の目的は果たせず。

 

気がつけば街に向かう車の中で。

 

 

あたしの機嫌はなかなか直りそうになかった。

 

 

「……撩、当分お預け」

 

そんな仕打ちをしたくなるのも当然でしょ。

食べ物の恨みは怖いんだから、ね。

 




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「DAYBRAKE」のふさふささんよりいただきました。
あちらの2周年イベントの記念リクに、恥ずかしながら図々しくもお願いしていただいたモノです。
当時のリク希望メールから抜粋しますと…


ぢつは先ほど、某時代劇を見てまして(←葵は大の時代劇好き♪)
竹林で重病患者が、必死に発作に耐える姿が出てたんですね。
竹をギュッと掴み、必死に発作に耐え、身もだえする姿に竹(笹)がさやさやと揺れて…。
これを見た時、「竹林プレイ」が思い浮かんだ葵は…バカでしょうか…。(恥)
頑張るリョウちゃん、耐えるカオリン。掴んだ竹がしなるごとに、笹がさやさやと音を立てて…
ん~幻想的♪って、思いません?(←え、思わない?それは私だけ?!)


…と、こんなクソ恥ずかしいリクでした。読み返してもあぁ恥ずかしいと、
穴があったら入りたいくらいです。(爆)
それを快くお受け下さったふさふささんに、心からの感謝をv
そして見下げた根性丸出しの葵に、心からの罵声をどうぞv(苦笑)


素敵なお話が満載のふさふささんのサイトはこちらですv
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