●誤算はその見事な助平面。●



新宿のアチラにもコチラにも。

たくさんの心配と、多大なるお気遣いを頂いてた私たち。
それでも、何やらどうやらと思いを伝え合って。

あれよあれよという間に……今日、これから……というコトに/////



お風呂に入って、リビングで二人、コーヒーを飲む。
その味がどこかいつもより甘いのは、私の気のせい……?
「香………」と、いつにない甘い声でささやかれ、肩を抱かれて。
いつも以上に優しく、熱を帯びた瞳を向けられた。
そうこうする内に、リョウの顔が近づいて来て。
あまりのアップに恥ずかしくなって目を逸らしたら……唇に押し付けられた、熱い熱。

優しく包み込むようなそれは、次第にその性格を露にして。
熱っぽく、そして荒々しく私を攫う。



「ふっ………ん、リョ、リョウ………っ」
初めてのことで戸惑う私に、リョウはわかってるという顔でおだやかに微笑み返す。
そして背中と膝裏とに手を回したかと思えば、素早く私を抱き上げて。
カップの後片付けもそこそこに、リビングを後にした。



タン、タン……と、小気味よく自分の部屋へと私を運ぶリョウをそっと見上げれば。
太くて男らしい首筋と、形よく整った顎。
それに続く肉厚な唇の熱と柔らかさは、先程知ったばかりで。
揺ぎ無い、意志の強そうな眉の下の黒い瞳は、真っ直ぐに前を見据えていた。
悔しいけど……見れば見るほど、イイ男。
そのリョウが私を……と思うと、胸の鼓動がさらにその速度を増した。



「…………ん?」
私の視線に気づいたリョウが、チラと視線をくれるけど。
それが恥ずかしくて……“何でもない”とばかりに、ふるふると首を振る。
……と、その目の前で……。



男らしかった眉はクタリと下がり、真っ直ぐに前を見据えていた瞳はニヘラと緩み。
その目じりはこれ以上は無いほどに、みっともなく垂れ下がり。
熱っぽく私の名を刻んだその唇はイヤらしく開いて、その端からは……ヨっ、ヨダレっ?!
そしてあろうことか、耳を塞ぎたくなるようなネトネトのベッタリの。
とんでもなくイヤらしい言葉が吐かれたのよっっっ!!!



「むっふふ~香ちゅわんっvもうすぐからねー。
お部屋に行ったら、今までに長く掛かった分。たぁ~っぷりとイイコトしようねぇ~っんvvv」
「…………ひっっっ!!!」



先程までのイケメンたる男は何処へやら。
目の前で今、私を抱いているのは、今までたくさんの女性依頼人を困らせて来た新宿の種馬にして、
そしてこの世の中で最も恐るべき、要注意人物。
史上最悪のもっこり男・冴羽リョウっっっ!!!



「……………っっっ!!!」
見れば見るほど背筋が寒くなり、気づけば冷や汗がこめかみを伝う。
だっ、だっ、誰がこんな男に、20とン年、大事に大事に守ってきたモノを。
誰がこんな、史上最悪のアホ面男にくれてやるか!!……と、今になって、慌ててジタバタ。



「はぁーなぁーせぇーっっっ!!!」
必死になって足掻くものの、その身体はガッシリとした太い腕に拘束されて、ビクともしない。
それをこの大バカ男は。
「ん~照れない、照れない♪暴れたりしたら危ないよ~香ちゃん♪」
と、暢気な口調でほざきやがる。
優しく諭すようなそのセリフもその顔ですべて台無しってのは、これっぽっちも気づいちゃいない。



「それとも……俺とこーゆーコトするのは、嫌……か?」
そのくせ、そういうセリフを吐く時だけはマジ顔なのって、ズルくない?
アンタはマジ顔が3分しかもたないウルトラマンかってぇーのっ!!
それでも、そんな顔で見つめられたら断れるわけなくって……
「あ……いや、そんなコト……」
なんて、つい動きを止めてしおらしい返事をしたとたん、これまた豹変。
「だっろぉ~?よしよし、もうすぐだからね~v」
と、さらに崩れるその顔は、デッサンも何もあったモノじゃない。



そうこうする内にも、リョウの部屋の目の前まで来ちゃって。
「むふふ~香ちゃん、今夜は寝かせないよ。たぁ~っぷりとイイコトしようね~vvv」
なんて言われて……どうこうするまでもなく、部屋の扉がパタンと閉じられた。



神さま……アニキっ!!
もしかして私、史上最大のミスを犯したかも……っっっ?!




END    2007.4.24