●自慢じゃないけど、傷つく勇気は無い。●



「バースディプレゼントは何がいい?」

そう聞いた香に、絵梨子さんはにっこりと笑って、こう言ったそうだ。
今週末に開かれるエリ・キタハラのバースデー・コレクションのモデルになってくれれば、大歓迎よっvと。



元来、友達思いの……というか、、踊らされやすい性格とも言おうか。
長い付き合いでそんな香の性格を十分に熟知してる絵梨子さんの魔の手に掛かり、
香はショーに参加するコトになった。

俺に言わせれば、乗せられ易い単純バカ……としか、言いようがない。



何事においても完璧主義者の絵梨子さんらしく、ショーは盛大なる盛り上がりのままに幕を閉じた。
関係者を交えての打ち上げパーティー。
ショーのラストを飾った香は、その淡いシフォンを幾重にも重ねたドレスのまま、誰よりも輝いていて。
エスコート役だった男性モデルやカメラマンたちに囲まれて、引っ張りだこ。
そんな飾らない笑顔を気安く振りまくから、世の男どもが勘違いするっての……いいかげん、気づけよな。



……どう?気になる……?
香の傍らに立つ絵梨子さんがそんな視線をくれるが、それに対し余裕の笑みを返す。
とはいえ内心は、焦げちまいそうなほど熱い嫉妬の炎が燃え盛っていた。



互いの気持ちを薄々察しながらもそうとは言えず、周囲の連中をヤキモキとさせている俺と香。
女に関しては百戦錬磨のこの俺が、たった一人の女にこうまで手が出せないとは……何とも情け無い。
だが、しかし……もし、万が一、俺の勘違いだったとしたら。
この想いが、俺だけの独り相撲だったとしたら……。
俺はとうてい、立ち直れやしないだろう。
実に情け無い話だが、俺は彼女に、それほどまでに惚れちまってる。



だから曖昧とはいえ、今のこの関係を壊したくはなくて。
「俺のモノに気安く触るんじゃねーよ」とも言えず。
ヤローどもにちやほやされている彼女を、こうしてただ、じっと見守るだけ。



とはいえ、断ることを得手としない香をいいコトに、その手を掴み、
どこぞへと連れ出そうとするいい度胸のヤローどもには。

これはやはり……お灸を据えてやらんとな。



……リョウ…………
口にしないながらも、香が縋りつくように助けを求める視線をくれる。
それ見ろ……言わんこっちゃない。
そんな気安い笑みを、ヤローどもにホイホイとやるんじゃねーよ。



内心の嫉妬と苛立ちとを、仮面の下に押し込んで。
やれやれ……という体で、重たい腰を上げた。




END    2007.4.24