●過程の無い結果論は嫌いなの。●



いつものとおりCAT
Sに行けば、そこにはカオリとミキとが談話中。
カウンタなど邪魔といわんばかりに、互いの額をくっつけるほどにして話し込んでいる。
「やぁ、カオリ、ミキ。そんなに熱心に、何を話してるんだい?」
そう言ってカウベルを鳴らし話にまざれば、案の定、その話題は我が悪友のものだった。



「聞いてよミック。リョウったらね?イキナリ私を押し倒してきたのよ?!」
「なっ………何っっっ?!」
あのバカ、よくもオレのカオリに……と、思わず出されたミネラルウォーターを噴出しちまった。
「何だかね?俺の気持ち、わかってんだろ?とか。お前もいいかげん、素直になれよ…とか。
ワケのわかんないこと言って迫って来て、ソファに押し倒して。
そっ……それでそのまま、私に伸し掛かってきたのよ?
まったく……人をバカにするのも、いいかげんにして欲しいわっ?!////」
真っ赤になって、怒りと恥ずかしさに震えるカオリ。
それを見て、ミキがくすりと笑った。



「でも……香さん?ホントにイヤだったワケじゃないんでしょう……?」
とたん、さらに頬を赤く染めたカオリは、あうあうとワケのわからない言葉を口走りつつ。
それでも最後には、小さく消え入るような声で「……う、うん……」と呟いた。
「手段はどうであれ、あの冴羽さんが覚悟を決めてそういう態度に出たのなら……
香さんもいいかげん、素直にならなくちゃ……ね?」
にこりと笑ってウインクを寄越すミキに「ん……////」と答えるものの。
「でも……ね?」と、またカオリの怒りモードがご復活。



「でも……でも、ね?いくら何でも、あの態度は無いと思わない?」
「そっ、それは確かに……」
「アイツが……アイツが私を好きだって言ってくれるのは、そりゃぁ嬉しいことだけど。
でも……でも、それがどうしてすぐそーゆーコトになちゃうワケ?!」
それが天下のもっこり男・リョウらしいと言えばそうなんだが……と思うものの、口には出さない。



「でも……想いを伝え合って、互いの気持ちを確認しあって。見つめ合ったり、抱き合ったり。
キ……キスしたりして。そうやって互いの距離を縮めていくものでしょう?違う?」
うーん……それは確かにそうなんだけど。
ヤツの場合、待ちに待たされた分、ンなモンは一気に省略。
即、ゴールしたいというのが本音なのだろう。




「それをあのバカ、イキナリもっこりに……って。いったい、どういう神経してるのよ。
まったく……デリカシーのカケラも無いんだから……っ!!/////」
デリカシー……はは……遥か昔に忘れた言葉、だな。(苦笑)
「そうよねぇーさすがに照れ屋な冴羽さんだからって、それはちょっと……よ、ね。
そりゃぁ愛する人と結ばれることも素敵だけど、女の子って、そこに至るまでのプロセスが大事なのよねー」
「そうそう……そうなのよ美樹さん!!それをあのバカ、これっぽっちもわかちゃいないんだから……」



………………。
始めはリョウのバカに怒っていたのだが、途中からはヤツを弁護する気持ちになって。
そして話の内容を聞くにつれ……何だかヤバイ風向きを感じてきた。
そう……今、カオリが口にしたヤツの言動諸々は。
確か昨夜、場末の飲み屋の片隅で、いつまでも煮え切らないヤツに説教した、それじゃぁなかったか……?



互いに惚れてるのは、もうバレバレなんだから。ココは一発、男としてガツンと行けよっ?!
男たるもの、安易な言葉はいらん。その熱い想いを身体で示せ。あらん限りの情熱で、押して押して押しまくれっ!!



……そう、確かそんなセリフを吐いた気が……?
するってぇと……何だ。
リョウは酒に酔ってのオレの戯れ言を真に受けて。
丸々そのまんまを、実行に移した……と?
「………………っっっ!!!」
冗談でなく、文字通りサーッと血の気の引く音を耳にして。
慌ててスツールから腰を浮かした。



「……っと、悪い。ちょっと用事を思い出したんで、オレはコレで……」
「あらミック、仕事なの?お忙しくってイイわね。
ウチもあのバカが男の依頼を請けないなんてほざくから、また今月も赤字よ?」
「はは……あ、アイツもそこんトコは、ちゃんとわかってるさ。大丈夫だよ、カオリ。心配ご無用さ」
己の立場を守ろうと、ついついリョウの肩身を持ってしまう。
その心中たるや、大波小波の乱れ打ち。
口から出る言葉は、もう半分以上、意味不明ってヤツだ。



そんな慌てまくりのオレの怪しげな言動に予想通り、カオリが「……?」と小首を傾げる。
これ以上ココにいたらさらに墓穴を掘るまでだと、ニヘラと愛想笑いを浮かべて店を出た。
危うく針の筵になるところだった……と、ほぅと一息ついたその瞬間。
道の向こうから、居並ぶ周囲より頭ひとつデカイあの男は。
もしかしなくても…………リョウッ?!



不埒な行為でカオリにこてんぱんに伸されたのか、いたくしょんぼりと肩を落として歩いてた男が。
オレの姿を見止めたその瞬間、それまで暗く沈んでいた瞳がまさしく、獲物を狙うハンターの“それ”になって。
「ミックぅ~~~っっっ!!!てっめぇ~~~っっっ!!!」
と、地獄の閻魔様も真っ青の、ものすごい勢いで追い駆けて来やがった。



「うっわ、リョウっ!!昨夜はすまんーーーっっっ!!!」
そう言って逃げるのが精一杯。
あぁ……しばらくはアパートへも帰れやしないな。
プロフェッサーの元にでも、しばらく匿ってもらうとしよう。
あぁ、それより何より、この現状をカズエに何て言い訳をしたら……っ?!



……と、そんなことを考えながら逃げ惑うオレを見て。
どこまでも澄み渡る秋空が、愚かなオレを嘲笑うかのように、
ふわりとした心地よい風を送ってよこした。




END    2007.4.24