●信じてくれなくたって、いい。●



春を先取るその色は、朱色にピンクに山吹色。

晴れやかな空色なんてのもあれば、しっとりとした若草色。
そしてちょいとモダンに、黒なんてのも。
花鳥風月に御所車。
めでたくも華やかなその柄を映す、あでやかな振袖を纏った美女たちが、
刺すような冷たい外気をものともせずに連れ立っていた。



そう…今日は成人式。
めでたくハタチを迎えたうら若き美女たち(もちろんヤローどもはカウントされない)が、
真っ白でふわふわのフェイク・ファーのショールを身に纏い、
日頃のミニスカ&ナマ足はドコへやら…という体で、しゃなりしゃなりと歩いていた。



その姿にもっこりしないなんて、男じゃないだろ?
街を歩けば右に左に、前に後ろにと、もっこりちゃんがいるんだぜ。
ココで声を掛けないってのは、そりゃ失礼だろう。
そこで甘い香りの花に誘われるミツバチのごとく、ふらふら~と近寄ろうとしたら……



ドゴォォォ……ンッ!!!



…と、相も変わらずいつものごとく、香のハンマーを食らっちまったというワケだ。
「リョウッ!!新年早々もっこりするんじゃなぁぁぁ~いっっっ!!!」
「だぁ~ってぇ…あんなカワイイもっこりちゃんに声を掛けないなんて、そんな失礼なコト、出来ないだろぉ~?」
「それがそもそもの間違いだってのに、気づかないのか、おのれはっ!!」
未だ言うかっ!とばかりに、次のハンマーを召喚させてやがる。



「ちっちっち…香ちゃぁ~ん、妬かない妬かない。大丈夫っ!!香ちゃんもカワイイよぉ~v」
「こっんのぉ~…どの減らず口叩いて、ンなバカなコト言ってるんだっ!!ボケっ!!
誰がアンタの言うコトなんか信じるかっ!!」



そう言って、ハンマーの下から抜け出しかけた俺の頭に、オマケとばかりにミニハンマーが炸裂。
香はそのまま、烈火のごとく怒りながら、一人ズンズンと足を進めて行った。



「…ってぇ~……」
アイツへの想いを伝えられない天邪鬼な俺の、珍しく素直な気持ちだったのに。
いつものとおりの性格が災いして、どうやら本気には取られなかったようだ。



「…まぁ、信じてくんなくったって、イイんだけど……さ」



苦笑しながらポツリと呟いたそのひとことを、一陣の風が攫って行った。




END    2007.4.24