●それでいい、それがいい。●



「……ん、やぁ…っ…」

頬を赤く染め、切なげに眉をひそめる香が、悦びの吐息をこぼす。
先ほどからの行為にすでにドロドロになったソコからは、湿った水音が止むこと無く、室内に響いていた。



「りょ…撩、も……あ、あたし……」
とろけてしまうほどの熱で俺を包んでいたソコがより一層強く締まり、香の限界を伝える。
それを合図に細くしなやかな脚を肩に担ぎ上げ、より深く、より激しく交わった。
ギュッと目を閉じ、息をするのも苦しげなその表情が、ますます俺の中の男を高ぶらせ、
一際高い声で香が啼いた直後……俺は想いの全てを、香の膣内(なか)に吐き出した。




     ++++++++++++



ブラインドから差し込む光に重たいまぶたをこじ開ければ、周囲はすでに午後の日差しに包まれていた。
隣りに居るはずの香の姿は、どこにも見当たらない。
軽く残るアルコールをゆっくりと頭を振って追い出し…昨夜の断片的な記憶を手繰り寄せる。



家出した娘を探して欲しい…という、ジーサンの依頼。
数年前に撮ったというすこぶる美人のもっこりちゃんの写真に否の言葉は無く、
パワー全開、張りきって捜し始めたのだが。

ようやく捜し当てた彼女はなんと…逞しくダンディな、立派なオナベになっていた。
ショックを受けたジーサンは「もう女なぞ、信じられんっ!!」と、いたく号泣。
俺はそのまま、ジーサンの歌舞伎町・ヤケ酒ツアーに付き合う羽目になっちまった。



しかし、これがまた、年に似合わぬとんでもない底無しジーサンで。
さすがの俺も…先に悪酔いしちまって。
オナベになった彼女が、謝りながらジーサンを引き取って行った、
という記憶まではあるのだが……その後の記憶は、サッパリだ。

アパートまでどうやって帰ったのかも、覚えちゃいない。
それが何時頃のことだったのか、果たして香は起きて待っていたのか……なんてのは、聞いてくれるな。



「そーすっと、さっきのアレは……」
体に残る気だるさは、昨夜の情事の名残に似てはいるが、
記憶も無いのに、香とコトを起した過去が無いだけに。

アレは、仕事続きで欲求不満な俺の素直な脳ミソが見せた夢だった……という結論に達した。



     ++++++++++++



さすがに腹が減ったなと階下に下りて見れば、
いつもなら煩く文句を言ってくるはずの香が、リビングのソファでうたた寝をしていた。

ベランダには燦々と輝く太陽の下、たくさんの洗濯物が気持ち良さげにはためいている。
働き過ぎて、一休み……と、いったところか。
そのあどけなく可愛らしい寝顔を見ながらくすりと笑った俺の視線が、
ミニスカートから伸びたしなやかな脚の一点に釘付けになる。




ふ…と寝返りを打ち、ズリ上がったスカートから覗いた内股に、赤く咲いた、一輪の華……。
それはまるで、たった今つけられたかのように、白い陶磁器のようにすべらかな内股に、
己の存在をこれでもかと誇示していた。
 



「古めかしい考えのおじいさんだから…ね?」
そう言って、仕事の間、夜は別々の部屋で休んでいた俺と香。
それゆえここ一週間ばかり、アッチの方はご無沙汰なワケで。
(だからさっきだって、あんな夢を見ちまったんだ。)
だからあの、内股に咲いた赤い華も……当然、俺のモノじゃ無いワケで……。



……ぶちっ……



「香っ!!起きろ、香っっっ!!!」
寝ている香の両肩を掴み、これでもかと激しく揺さぶれば。
驚きつつもまだ眠たげな瞳の香が、欠伸をしながら目を覚ました。
「な…なぁに、撩……?」
「これは何だっ!誰につけられたっ?!」
寝ぼけ眼の香に苛立ちを感じつつ、それ以上の腹ただしさを隠すこともせず、
香のミニスカートをグイと上げ、その白い脚を大きく割る。




「…きゃっ!!ちょ、ちょっと、撩っ!!いったい何を……/////」
「うるさいっ!!誰がお前の身体に、こんなモンを……誰だ、えっ?!ミックのヤツかっ?!」
「こんなものって、い、いったい……あっ/////」
俺の剣幕に驚きつつも、自分の内股の“それ”を認めた香の頬が、瞬時に赤く染まる。
よくも香に……と意気がってリビングを出ようとした俺の背中に、
「ちょ…ちょっと、撩っ!!」と、俺を呼び止める香の声。

こんなコトされてもヤツを庇う気か…と、苛ただしげに振り向いた俺の頬に、
「パチ…ンッ!!」と、香の平手が炸裂した。




「……っ?!」
「もうっ!!いいから落ち着いてっ!!」
「落ち着けって…お前、こんなコトされて、何を暢気に…っ」
「うるさいっ!!」
ピシャンッ!!……と、今度は反対側の頬を打たれた。
赤く腫れて痛そうな自分の掌を守るように包み込み、
はぁはぁと肩で息をする香に、荒くれだった俺の心が少しだけ落ち着きを取り戻す。

「あのね……それ、アンタの勘違いだから」
「……んぁ?勘違いだぁ?だ、だって、誰がどう見たって、そりゃキスマーク以外の何ものでも……」
「だっ、だから……それをつけたのは、目の前にいるアンタよ、撩っ////」
「……へっ?!」



香の話によれば、依頼人のジーサンと飲み歩いたままジーサンをどこかに置き去りにして、
俺は一人、そのままフラフラと明け方に帰って来たらしい。

そして常のことながら、リビングで俺の帰りを待っていた香に出迎えられ、そのまましなだれかかり。
やっとの思いで酔っ払いを部屋まで運び込んだ香を……俺はそのまま、ベッドに押し倒したのだそうな。



「そっ…そりゃぁ確かに、一週間も別々だったけど……でも、だからって、
あっ…あんな無理やり、あんなに、はっ…激しく……/////」

文句を言っていたはずの香の頬が徐々に赤く、羞恥の色に染まっていく。
その様子から察するに……俺ってば、たまってた分、相当激しくヤっちゃったワケだ。
そーすっと、今朝のアレは……夢では無かった、と、いう……?



「それなのにアンタは何一つ覚えてないばかりか、私がミックと……なんて、疑ったワケよね?!
まったくもう……お酒のせいだとしても、許さないんだから…バカっっっ!!!」

往復ビンタに続き、とどめのハンマーをくれて、アパート全体が揺れるほどの勢いで
リビングのドアを閉めて出て行きやがった。

は、はは……一週間ぶりのソレを、酔いに任せて無理やり。
しかもそれを覚えて無いばかりか、あろうことか香を疑ったりしたら……。
それはやっぱ…怒るだろうな、うん。



仕方ない……柄じゃぁ無いがココはひとつ、素直に謝っとくとするか……。
めり込んだ床からヨイショと抜け出して、首をコキコキと回して準備体操。
「もちろん、この身体で……な」
そう。それでいい、それがいい。
何たって俺は、それしか謝り方を知らないんだから。
ニヤリと笑って、一眠りしてすこぶる快調の身体が求めるままに。
とびきりのご馳走が待つ部屋へと歩き出した。




END    2007.4.24