●Dangerous zone●



新宿には、余人が足を踏み入れてはいけない、危険な場所がある。




春のそよ風のように、あたたかなひだまりのように。
そして5月の新緑のように爽やかな彼女。
その誰を差別するでもないやわらかな笑みに惹かれるのは、致し方ないコトなのだが。
でも、その我欲を募らせ、今一歩、彼女に近づきたいと思い。
そしてひとたび、彼女の元へと一歩足を踏み入れようものなら……
ソイツの命は、24時間と持たないだろう。



彼女の傍に、彼、在り。



目を皿のようにし、彼女の周囲に人っ子一人、猫の子一匹。
はたまたノミの一匹すら見当たらなかったとしても。
それでも、彼女の姿が見えるトコロに、その気配の感じるトコに……彼は、居る。



そして彼女に悪さをしようとする輩を…いや、たとえそうは思ってなくても。
彼女の周囲、半径1m以内に侵入しようとした者は……容赦なく、彼の禍々しいまでの殺気に刺し抜かれ。
また、彼女によこしまな思いを持って近づこうとしたり、はたまたそのような行為に走ろうとする輩には……
彼お気に入りの愛銃から発せられたマグナム弾が、彼の心のままに、
あわれなソイツを、あの世へと送ってくれるだろう。



そして今日も彼女は、自らの周囲でそんな命掛けの行為が行われているなど露とも知らず。
いつもと何ら変わらぬ、爽やかで、それでいて、あたたかな慈愛に満ちた。
あの、いつものやわらかな笑顔を振り撒きつつ、新宿の街を歩くのだった。



眠らない街・新宿……。
一見、荒くれ者の住まう街かと思われがちだが、本当は人情深い人々の集う平穏な街。
ただひとつ……"彼女"に、近づきすぎなければ……の、話。




END    2007.6.16