●first、second、そして…●



リョウと初めて出会ったのは、高校生の時。

アニキの後をついてって、その仕事の実態を知った。
いろんな意味でショックを受けたケド、リョウの中の正義心とか意志の強さに。
何より、嘘のつけない射るような真っ直ぐな視線に。
そしてその中に微かに覗いた優しい色に釘付けになった。
それが、at first(最初)。



次に再会した時は、私が女だと気付かずに、女に手を挙げる若造のように勘違いされて、ひっぱたかれた。
女と見れば所構わずもっこりするクセに、何てヤツっ!!……と思ったケド。
でも、その軟派な表情(かお)の後ろに見え隠れする、
まだすべてを見せてはくれない本当のリョウに惹かれていく自分を制御出来なくて。
気付けばどんどんと惹かれていった。
それが、at second(二番目)。



言葉とは裏腹に、最初の出会いもその次も惹かれて行って。
アニキの後を継いでパートナーにならなかったとしても、
このまま二人、見知らぬ者同士として三度目の出会いをしたとしても。
四度目も五度目も、そのまた次も……。
それらすべてが、どれもまた最悪な出会いだったとしても。
それでもきっと、私はリョウに惹かれてた…悔しいケド、そんな気がする。



「んぁ……何、人の顔ジロジロ見てんだ?」
「んー……?べっつにぃ~?」
自意識過剰じゃない?とばかりに、ふふんと鼻で笑ってやる。
危ない、危ない。
ただでさえ勘の働きは人一倍なんだから。
もし私がこんなコト考えてるなんて知れたりしたら、どうなるってのよ。
感情が表に出やすいという悪いクセを隠すように、ついと顔を反らして小さく肩を竦める。



「ふー……ん、まぁいいや。香ちゃん、コーヒー~」
しばし不審顔だったけど、ソファに寝そべったリョウがまたエロ本に視線を落とす。
いつもならハンマーとともに、勢いよくアカンベーをしてやるトコロなのだけど。
その手首に巻かれた真っ白な包帯は、敵の照準から私を守ってくれた、その証。
あぁ……そんなの見せ付けられたら、また惚れ直しちゃうよ…。



何があっても、その身体すべてで私を守ってくれるリョウ。
いつまでたっても自分の身すら守れない自分には、さすがに嫌気がさすけれど。
こうしてその身をていして私を守ってくれてる時だけは……
いつも喧嘩ばかりしてるリョウが、私を"女"として見ててくれてるようで、ちょっぴり嬉しい。
もちろんそんなコト、不謹慎なんだけどね。



そのくせ、そんな彼への、心から溢れんばかりの想いとは裏腹に、口から出るのはいつだって喧嘩腰。
言葉と態度が矛盾してるにしても、これは甚だし過ぎよね。
いつかは素直にこの想いを打ち明けなきゃとは思うんだけど、
元来のあまのじゃくな性格はいつだって災いし、もう何年も、自分自身に煮え湯を飲まされているのが現状。
あぁ、ホントに私ったら情けない……。



いくらため息をついたとて、二十とン年間育って来たこの性格が、今更すぐにも変わるというハズはなくて。
当のその相手とて、自分の心の奥底は、誰にだって覗かせやしない、徹底した秘密主義。
目が眩むほど傲慢で、自己中心的。
その力と勢いとで、周囲のすべてを意のままに操って。
そして心の内すべてを、容赦なく奪ってく男。
だから気付いたら、もう……完全に惚れさせられてた。

そう……悔しいケド、完敗よ。
こんな二人じゃ、この先どうなるコトやら……って感じだわ……?



とことん惚れ抜いてるのも事実なら、素直になれない性格なのも、これまた事実。
出会って惹かれてく、その回数に比例するように、私のあまのじゃくも、更に輪を掛けて頑なに。
このままじゃ、二人のゴールはいつになるのかしらね……。



「………香ぃ~?」
後から後から漏れ出るため息の合間に、リョウの少し苛立ち紛れの声が突き刺さり。
「はぁ~い、はい。今、いれるわよ」と、生返事を返して。
そんな心の奥底を覚られぬよう、最後にひとつ、苦笑まじりのため息をこぼして。
いかにも大儀そうに、ゆっくりと腰をあげた。




END    2008.9.10