●膝枕●



中東の某国がひそかに開発していた、新型のウイルス兵器。

そのデータがNYマフィアに流出する気配があるたとかで、
その中継地たる日本に乗り込んで来たのが、元CIA捜査官という凄腕のスナイパー、ザッカリー。
お堅い前歴の割に気さくなヤツで、向こうにいた時、ある事件をきっかけにして、親しくなった。
そして今回、日本に来るなら手伝えと、無理矢理助太刀させられちまったんだ。



「いーじゃねぇか、それくらいっ!!来日記念に、ほっぺにちゅーくらいさせてくれたって、いいだろ?」
「……ダメだ」
「いいじゃん、減るモンじゃぁあるまいし」
「……減るっ!!」
「…………」



向かいに住む金髪堕天使と同類で、無類の女好きのこいつを香に合わせちまったのが、運の尽き。
「Oh、ヤマトナデシコ~vvv」
とか言いながら、抱き着くのを、無理矢理引っぺがすのに苦労したぜ。
しかもその堕天使が俺と香についていらんコトを告げ口しやがるから、よけい始末が悪い。
どうにかこうにか依頼を片してやったのに、香を気に入ったザッカリーは
帰りの足をずるずる引き伸ばし、香にべったりくっつきやがる。
仕事が片付いたんなら、とっとと帰れっ!!
……ってんで、先のようなやり取りになったワケだ。



成田まで送ってやったのをありがたがるどころか、最後の最後まで香に迫りやがるから、
香が土産を買いに行ってる間に、らしくもないが、とどめを刺してやった。
そのぉ……何、だ。
俺の許可なく、俺のモンに手を出すな……ってぇコトだ///



「ふふ……ザッカリーさん、いい人だったわね」
「ふん……っ!!ただの女たらしだ」
「あら、それならリョウだってそうじゃない?」
「……うるせぇ」



天下無敵といわれたこの俺が、恥も外聞もかなぐり捨てたのは、ひとえにお前のためなワケで。
その俺の前で、他の男の名前など出すんじゃねぇよ。
ましてや誉めそやすなんて、論外だ。
ようやく手に入れたお前を、俺以外の男の目に触れさせるなんざ、
ホントは心臓がねじれちまうくらい、嫌なんだ。
どこか誰の目にも触れないトコロへお前を連れて、閉じ込めちまいたいほどなんだ。
そう……俺はそれくらい、嫉妬深い男なんだ……。



だが、そんなダセぇコト、表立って堂々とは言えやしない。
だからザッカリーを追い払うために、俺らしくもないが、なけなしのプライドをかなぐり捨て、
らしくもなく本音を言ってやったことこそ……認めてくれたっていいだろう?
他の誰にもやらない、お前は俺だけのものだから、だから……。
だから今、こうして、この膝枕を味わうくらい、ワガママ言ったって、いいだろう……?



「……ねぇリョウ、そろそろちょっと重……」
「……もう少し、な」



身じろぎする香の腰をがっしりとホールドしつつ、
体制を少し変えてあまり重さがかからないようにしてやれば。
「しょうがないなぁ……」
と、ため息つきながらも、珍しく甘えたな俺を楽しむように、
細い指先がゆっくりと髪をもてあそぶのが心地よい。
誰にも邪魔されない、二人きりの時間……。
らしくもないが、こうして普通の恋人同士みたくして過ごすのも、たまにはいいよな……?





END    2013.10.24