●ぱわーすぽっと。●




「……パワースポット?」
「そうなのよ。何だか今、すごい人気らしくてね?」
いつもの伝言板チェックの帰り道、立ち寄ったCAT'Sで、息巻くかすみちゃんに捕まった。
苦笑しがちにフォローしてくれる美樹さんを押し退けるかのようにカウンターから身を乗り出してくる、かすみちゃん。
その瞳は爛々と輝いていた。
「そうなんです!縁結びにすごく御利益があるらしくって、女の子の間では大人気!雑誌でも取り上げられてるみたいで、
ウチのクラスの子も、みーんなお参りしてるんですよ♪」
「うーん……そういうのって、どうかなとも思うんだけど……」
かすみちゃんの意見に反対するワケじゃないけれど、
テレビや雑誌で取り上げられるのは、割と一過性のものが多いのも事実なワケで。
口にこそ出さないケド、私としては、ちょっと眉唾モノかなと思ったり。



「……ん、もうっ!!そりゃぁ美樹さんや香さんには、海坊主さんや冴羽さんて素敵な人がいるから、関係ないでしょうけど……」
「……やだ、かすみちゃんたら。リョウと私は、そんなんじゃ……」
「……いまさら言い訳、しないで下さい」
「…………」
バサリと音が聞こえたかと思う程の、一刀両断。
外は見事な青空なのに、ブリザード吹きすさぶばかりのジト目でにらまれると、何も言い返せない。
「んじゃぁ、ただの縁結びには興味なくても、海坊主さんや冴羽さんとの絆を、
より強いものにするって考えたら、どうです?」
「あら、それならいいわね」
洗い終えたカップを拭いていた手を止め、美樹さんうっとりとした瞳でにこりと微笑む。
「でしょー?じゃぁ次の日曜に……約束ですよっv」



      ■■■■■■■■■■■



「……てなコトになっちゃったのよ」
「……お前って、どうしてこう、のせられやすいんだか」
リビングで、湯気の立つマグカップからコーヒーを口に含んだリョウが、やってらんないとばかりに肩をすくめる。
「……何よ、そんな言い方しなくたっていいじゃない」
確かに多少なりとも乗せられやすい性格だとは自覚してるけど、
せっかく楽しく話してるかすみちゃんを否定するのも、話しの腰を折るのも、私には出来なくて。
気遣いがあると言われるならまだしも、そんな言い方されるなんて、筋違いよっ。
「あのね、リョウ。私は……」
「お前、これ以上、何望んでんの?」
と、皆まで言わせず、テーブルにカップを置いたリョウの手が、そのまま私の手首を掴んで、引き寄せた。



「これでもまだ、足りないワケだ。欲張りだねぇ、香ちゃんは♪」
そう言って、太く逞しい腕が私の肩を引き寄せて。
気付けばそのまま、がっしりとした腕の中、すっぽりと捕らえられていた。
「……リョウっ///」
「俺と“こう”なったってのに、まだ縁結びとか願っちゃうんだ。
リョウちゃんの愛し方、まだ足りなかったのか、ふーん……?」
にやり、とほくそ笑む様すら、見惚れる程で。
耳の後ろに鼻先を擦り寄せられて、どきりと胸が高鳴った。



「あっ、愛し方って、私は……///
ただ表に出さない、あまのじゃくなあんたが悪いんじゃない」
「……それはお互いさま、だろ?」
気の遠くなるほどの時を重ねて、二人、そういう関係になったコトは、最近のコト。
自分自身でさえ、まだこの急激な環境の変化に慣れないんだから、ましてやみんなに報告なんて、とんでもない。
今しばらく落ち着くまでは……と、まだみんなには内緒なの。
「そっ、そりゃぁそうだけど……」
「……わかった、わかった。いいから今は……黙っとけ」
苦笑まじりのリョウの顔が近づいて、頬に大きくあたたかな手が添えられて。
素直になれなかった長い時間を補うかのように、ゆっくりと唇を重ねた。




END    2014.5.24