●冴羽家のトイレ掃除事情。●



おはようございます、槇村香です。

昼過ぎまでベッドで惰眠を貪る、ドコぞのバカ男とは違って、
毎朝決まった時間に起きる、規則正しい生活がモットーです。
でも今日は、いつもよりちょっぴり早起きして、トイレ掃除。
なぜなら今日は、資源ゴミの日だからなのよ。
資源ゴミの日に、なんで朝からトイレ掃除するのかというと、
我が家のトイレには、バカ男の隠し財産が山とあるから、なのよね。



普段からこまめに気付いた汚れを磨いたりするから、
トイレ掃除そのものはササッと済むんだけど、問題はこれから。
馬車馬なみに食べるクセに、便秘とは縁のないリョウ。
私だって、それほど便秘がちではないけれど、時として……というコトもあるので、
トイレには気晴らし用にと、いくつかの雑誌を備えてるの。
他愛のない女性週刊誌だったり、通販のカタログだったり。
行くあても無いケド、旅行会社のパンフレットだったりね。
読みあきたそんなものを、マガジンラックからまとめながら、続いて戸棚や引き出しをガサゴソと。



ペーパーのストックや、掃除用品に芳香剤。
そして多分気付かれてるかもだけど、こっそり隠してる女の子の必需品、
生理用品などをしまってある戸棚や引き出しを、奥の方までガサゴソと見てみれば……
案の定、リョウの隠し財産が、ゴロゴロと出てきたわ?
「共有スペース、ましてや、友人や依頼人の目に触れるトコロに、もっこりは一切禁止」
と約束したので、エロ本の類は見当たらない。
でもまぁ、持ち込む姿を見るのはしょっちゅうだけどね。
「こいつが無いとスッキリ出ねーんだ」
とか言ってるケド、いったい"ナニ"を出してるんだかっ。(爆)



……と、思って油断させといて、その実、ヤツはこっそり、運び込んでたみたい。
案の定、戸棚の奥から、あられもない格好で際どいポーズをとる美女たち諸々の雑誌が、
両手では持ちきれないほど、わんさと出てきやがった。
海外暮らしが長かった影響なのか、ただ単にアイツの好みなのかは知らないケド、
洋モノ、金髪美女の専門雑誌に、行きつけ・ねこまんまの新人紹介・「今月のねこまんま」。
はては、こんなの書くヤツの気が知れないと思うタイトル、
「女には見せられない、男だけの歌舞伎町・裏のウラ」なんてぇムック本だの、と。
どーしようもないシロモノばかりが次々と出てきたの。



「くそっ……スタイルいいなぁ」
と、思わず金髪美女のダイナマイトボディのページをめくれば、
ページの両脇、指先があたるあたりの紙がふやけて少し波打ってる。
これはまさしく、紙が体温で温められるまで、長いコトにぎりしめてた証拠。
そして所々のページには、下の方に変なシミ。
これは多分、きっとヨダレね。
……ったく、トイレで何してんだかっ(凹)



ふぅとため息つきながら、壁にかけられたカレンダーの最終ページをめくれば、
カレンダーの台紙に隠れるように、これまたセクシー美女のピンナップ。
12月、年の瀬近くになると、いそいそと、進んでトイレ掃除をするのはこのためか……と、
乾いた笑いとともに、あきれてものが言えなくなる。
あまりにあきれたので、悠然と微笑む金髪美女をびりりと剥がし。
代わりにキッチンに駆け込んで、家計費を預かるポーチから引っ張り出してきたのは、
両手にもあまるほどの請求書。
「冴羽リョウ」名義のそいつらを、これでもかとベタ貼りしてやったわ♪



「まったく。よくもまぁ、毎回毎回、次から次へと……」
と、軽い脱力感とともに、諸々の雑誌に手早く紐をかけていく。
これだけ頑張ったところで、月イチくらいで同じ分だけの作業をするハメになるんだから、
往生際の悪い男に腹がたつ。
そして、ずしりと重さのある雑誌類を抱えて、玄関へ。
リョウが起き出す前に、ゴミの回収に間に合わせなきゃいけないから、大変なのよ。
そしてゴミの回収車が元気よく発車するエンジン音を耳にしながら、
何食わぬ顔で朝食を用意して、一人で食事を済ませる。
洗濯物やら軽く掃除機をかけおえた頃、ようやくリョウが起き出す気配がしてきた。



「リョウ~?私、伝言板見に行ってくるから、ご飯ちゃんと食べるのよ?」
「ふぉ~い……」
洗面所で顔を洗ってるリョウに声をかけつつ、玄関の扉を急いで閉める。
通りへ出て数歩あゆみを進めたトコロで、アパートが揺れるほどの叫び声が聞こえてきた。
「うわぁ~っ!!お、俺の大事なコレクション…香ぃ~っ!!」
周囲の人々が目を丸くするほどの大声だったけど、知らんぷり、知らんぷり。
よしよし、今日も無事に片付いたわと、クキクキと首を回した。
見上げる空、はまだまだ夏の気配真っ盛りで、まぶしいばかりの白い雲が踊ってる。
「ふぅ……今日も暑くなりそうっ」
降りしきる日差しが、アスファルトに色濃く影を刻む中、
きらめく太陽に目を細めながら、伝言板へと一歩踏み出した。




END    2012.8.25