●梅雨明けの空●



日本特有の長い雨季が終わりを見せて、ようやく眩しいばかりの太陽を拝めるようになった。

その恩恵にあずかろうとベランダに出て大きく伸びをすれば、向かいのアパートの屋上にはためく、たくさんのシーツ。
抜けるような青空の下、ゆったりとその身をまかせる真っ白なシーツはあまりに清々しく。
その光景と、それらが意味するトコロの淫猥さがあまりに対象的で、思わず苦笑しちまった。



初恋の"彼女"と悪友とが一線を越えてから、どれくらいたっただろう。
そんな素振りをちらとも見せないまま、その実、ホントはかなり固執する性格のあの悪友が。
念願かなってようやく手に入れた彼女を片時も離すハズがなく、連日連夜、ヤツのベッドに縫い留められてるらしい…。
馴染みのサ店でも最近彼女を見かけないのはそのせいだ、とは、我がワイフの談だったのだが。
あのはためくシーツたちを見るにつけ、そんな噂もあながち嘘じゃぁないらしい。
カオリの部屋は、彼女に相応しい、慎ましやかなシングルベッド。
それなのに、はためくシーツたちはみな、悪友好みの大きなダブルのシーツ。
それらがこれみよがしと、舞っている。
その意味するトコロは…なぁ?(苦笑)



one、two、three…と、はためくシーツを指折り数えてみれば、
先週末のつかの間の晴れ間からこっち、日数分のシーツがきっちり列をなしてるじゃないか。
いくら女神を得た喜びを態度で表してるったって、モノには限度ってモンがあるだろう…?
もっこり男・サエバ リョウという男を知ってるがだけに、それに付き合うコトになったカオリに深く同情。
と、同時に、ついにヤツのモノに…手の届かない存在になっちまったカオリに、小さく胸が痛むのをとめられなかった。



「…ミック?何してるの?」
窓外をぼんやりと眺めていたその後ろから声が降りかかり、振り向けば、熱いコーヒーのカップを手にしたカズエがいた。
窓からそよぐ風に、きれいな黒髪が少し茶色がかる様が、この上なくきれいだった。
「…なんでもないよ、カズエ」
笑顔でそう返しながら、その手からカップを受け取り、傍らのテーブルにそいつをコトリと置いて。
ヤツと勝負する気など更々ないが、男としての変なプライドを刺激され。
このまま負けっぱなしみたいなのも何か癪だな、と。
今は何より、最愛の。
大切なワイフ・カズエの手を取り、そっとソファに押し倒した。




END    2011.7.26